2015 Fiscal Year Research-status Report
一酸化炭素吸入はドナー臓器を保護しえるのか?ラット心臓移植を用いた検討
Project/Area Number |
15K20354
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
藤崎 宣友 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (90732644)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 虚血再灌流障害 / 一酸化炭素 / 心移植 / ドナー |
Outline of Annual Research Achievements |
今回の研究の目的は、強力な細胞保護作用を持つことが知られている一酸化炭素(CO)を用い、ラット心臓移植においてドナーの前処置としてCOを吸入させる事で、そのグラフトの状態が改善するのかどうかを調べ、かつそのメカニズムを探求することである。 これまで蓄積された基礎データから、250ppmのCOを吸入させたドナーから採取したグラフトが対照群と比較し良好な機能を示す事がわかっていることから、COを吸入したドナーからの心移植は、対照群に比べ予後が良好である事が示唆された。ドナーから採取された心臓をUniversity of Wisconsin液の中で8時間保存し、レシピエントに移植した。移植された心臓グラフトを肉眼的な評価を行い、分子生物学的評価としてグラフトよりmRNAを抽出し炎症性メディエーター、抗炎症性メディエーターの発現量をそれぞれリアルタイムRT-PCRを施行し評価した。さらに病理学的評価を行い、好中球の組織への浸潤を確認する事でCOの有用性の評価を行った。結果はどれもCOの有用性を示唆する結果が得られたため、さらなるメカニズムの解析を行うべくGene arrayを施行する事となった。使用する検体は当初移植グラフトから得られたmRNAを解析する予定であったが、手技に伴う侵襲の影響が無視できない可能性があったため、専用チャンバー内でCOを24時間吸入させた後の心臓から検体の採取を行い評価した。得られた結果からは、抗炎症性メディエーター等の期待された物質の発現は得られず、標的分子の発現を確認するには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット異所性腹部心臓移植手技は確立された手技であるものの、安定した手技となるまでには相当の習熟が必要であった。また当初計画していたCO吸入は3時間であったが、グラフトからRNAを抽出しGene arrayを施行するにあたりCOへ暴露する時間を増やすため、また効果的な細胞保護作用が得られる事が示唆されたため、ドナーラットに専用のガスチャンバー内で24時間CO吸入を行うこととなった。当初の予定通り、肉眼的、分子生物学的、病理学的に評価を行いCOの有用性が示唆されたものの、Gene arrayでは期待された結果は得られず今後の見通しに関しては再検討が必要となる。全体的には、当初2年目に予定していたGene arrayまで進行する事が出来たため、概ね順調に進行していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
Gene array結果の再検討を行い、抗炎症性サイトカイン等の蛋白の発現を確認できるかどうか検索するとともに、これまでの実験結果をまとめ、論文作成を開始し、投稿まで目指していきたい。 COの有用性を示すメカニズムを探求するために、検体の評価項目等を再検討し、新たな項目を追加することを考慮していく。予定していた脳死モデルの確立にも習熟を要すると思われ、実験計画を前倒しし同時並行で行っていく予定としている。
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Causes of Carryover |
実験計画が予定よりも早く進行したため、当初2年目に外注委託で予定していたGene arrayを今年度に施行する運びとなった。そのため次年度予算に計上していたGene array代の前倒し請求を行い、今年度中に交付して頂くこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験自体は概ね予定通り進行しており、次年度は当初の計画通り進めていく予定にしている。またこれまでの研究成果を海外学会、国内学会で発表して行く予定である。
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