2015 Fiscal Year Research-status Report
Runx2による骨芽細胞突起形成阻害の分子メカニズムとその生理的意義の解明
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15K20364
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
河井 洋祐 長崎大学, 病院(歯学系), 助教 (50423629)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Runx2 / 骨芽細胞 / 細胞突起 |
Outline of Annual Research Achievements |
未熟骨芽細胞はコラーゲンの走行がランダムな線維骨を形成するが、線維骨は容易に破骨細胞によって吸収され、成熟した骨芽細胞がコラーゲンの走行が一定の層状骨を形成する。骨芽細胞の成熟過程で、Runx2の発現は未熟骨芽細胞に強く、成熟とともにその発現は低下する。我々は、2.3 kb I型コラーゲンプロモーターを用いて、骨芽細胞特異的にRunx2を過剰発現したトランスジェニック(tg)マウスを作製したが、骨芽細胞の成熟が抑制され、骨は未熟骨芽細胞で占められていた。全身の骨は、線維骨によって形成されており、高頻度に骨折が観察された。成熟骨芽細胞マーカーであるオステオカルシンの発現も著減していた。興味深いことに、Runx2 tgマウスではほとんど骨細胞が存在しなかった。また、電子顕微鏡で観察すると、骨芽細胞の突起が著減していた。すなわち、これまで、骨芽細胞の分化・成熟は、産生される基質の種類と量によって規定されてきたが、突起形成を主とした細胞骨格の変化が骨芽細胞の成熟を規定している可能性が示唆された。骨芽細胞突起数とRunx2発現レベルが逆相関することを実証するために、骨芽細胞株MC3T3-E1細胞にレトロウイルスによってIRES-GFPとRunx2-IRES GFPを導入し、細胞突起数を測定した。また、Runx2のsiRNAをエレクトロポレーション法でMC3T3-E1細胞へ導入し、細胞突起数を測定した。両者において、突起数の定量化を行い、Runx2の発現量と突起数が逆相関することを明らかに出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨芽細胞株MC3T3-E1細胞を用いて、Runx2の過剰発発現およびsiRNAによって細胞突起減少および増加させることに成功し、定量化できるようになった。これにより、Runx2の発現量と突起数が逆相関することを明らかに出来た。マウスの骨組織での骨芽細胞突起数の計測は、適切な試料作製条件を決めることに時間がかかったが、ようやくその条件を決めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
3週齢内骨膜側の骨幹端部および骨幹部骨芽細胞を走査電子顕微鏡で観察し、骨芽細胞突起数を計測する。対側の大腿骨より切片を作製、Runx2, Col1a1, オステオポンチン、オステオカルシンのプローベを用い、in situ hybridizationを行う。偏光顕微鏡でコラーゲンの走行を調べる。骨幹端部と骨幹部で、骨芽細胞突起数、骨芽細胞マーカーの発現、コラーゲンの走行を比較し、骨芽細胞突起数と骨芽細胞の成熟および骨の成熟とが相関するか調べる。 10週齢の野生型マウスおよびRunx2 tgマウスの骨芽細胞よりmRNAを抽出、マイクロアレイで、野生型マウスとRunx2 tgマウス間で、2倍以上差があるcytoskeleton関連遺伝子を選択する。 MC3T3-E1細胞にRunx2を導入、上記で選択された遺伝子が誘導あるいは抑制されるか検討する。また、Runx2のsiRNAを導入して、同様に調べる。細胞骨格関連遺伝子で、Runx2 tgマウスで発現が増加あるいは低下しており、Runx2の導入により誘導(抑制)、Runx2のsiRNAの導入により抑制(誘導)される遺伝子を候補遺伝子とする。 MC3T3-E1細胞に上記候補遺伝子を導入し、細胞突起の変化を観察し定量化する。さらにsiRNAを導入、突起形成を定量化し、過剰発現と逆の結果になるか調べる。 retrovirus systemによってRunx2-IRES GFPを導入したMC3T3-E1細胞にRunx2 によって発現誘導された候補遺伝子のsiRNAを導入、Runx2による細胞突起の変化が消失するか検討する。同様に、retrovirus systemによってRunx2-IRES GFPを導入したMC3T3-E1細胞にRunx2 によって発現抑制された候補遺伝子を導入、Runx2による細胞突起の変化が消失するか検討する。
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Causes of Carryover |
固定した新生児、3週齢、8週齢マウスの大腿骨を海綿骨部、皮質骨(骨幹端部)、皮質骨(骨幹部)の3カ所で切断後、6N HCL、1mg/mlのコラゲナーゼで処理し、切断面を走査型電子顕微鏡で観察し、骨芽細胞突起数を計測する実験に時間がかかり、Runx2、 Col1a1、 オステオポンチン、オステオカルシンのプローベを用いた、in situ hybridizationを行う事が出来なかった。このため、in situ hybridizationの関連試薬費182,253円を繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
in situ hybridization試薬、RNA精製キット、各種制限酵素、修飾酵素、逆転写酵素、遺伝子導入試薬、Real Time PCR関連試薬、カスタムオリゴ、アガロース、FBS、培養液、siRNA、プラスチック器具などの購入 (972,253円)、マイクロアレイ解析の外注(250,000円)、国内旅費、研究成果発表(@70,000円x1人=70,000円)、海外旅費(@250,000円x1人=250,000円)、研究成果投稿料(200,000円)、論文校正料(40,000円)
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[Journal Article] Cbfb regulates bone development by stabilizing Runx family proteins.2015
Author(s)
Qin X, Jiang Q, Matsuo Y, Kawane T, Komori H, Moriishi T, Taniuchi I, Ito K, Kawai Y, Rokutanda S, Izumi S, Komori T.
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Journal Title
Journal of bone and mineral research
Volume: 30
Pages: 706-714
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Cbfb plays important roles in bone development through the stabilization of Run family proteins.2015
Author(s)
2.Qin X,Jiang Q,Matsuo Y,Kawane T,Komori H,Moriishi T,Taniuchi I, Ito K,Kawai Y,Rokutanda S,Izumi S, Komori T
Organizer
The RUNX Transcription Factors in Development and Disease
Place of Presentation
Weizmann Institute of Science, Israel
Year and Date
2015-10-18 – 2015-10-21
Int'l Joint Research
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