2015 Fiscal Year Research-status Report
力学的ストレスを応用した筋骨格系維持再生療法の実現化に向けた分子基盤研究
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15K20375
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
楠山 譲二 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (70596105)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / メカニカルストレス / LIPUS / 骨分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋骨格系の維持再生療法の細胞ソースとして重要な間葉系幹細胞(MSC)は、細胞治療に用いる際の長期継代培養によって分化能を喪失することが知られている。本研究年度では、低出力超音波(LIPUS)による刺激がMSCの継代に伴う分化能力の減少を防ぐことを見出した。LIPUSを加えながら長期維持したMSCは、通常に培養したものと比較し、骨分化誘導による石灰基質形成や骨分化マーカー遺伝子の発現が有意に高かった。またLIPUS刺激を行ったMSCは未分化能に関連した転写因子群の発現プロパティが通常とは異なり、特にNanogの発現が高く維持されていることが分かった。またこのようなLIPUSの効果を伝達するシグナル伝達分子の網羅的解析を行ったところ、B細胞のシグナル伝達系において重要な役割を持つことが知られているSyk(Spleen tyorosine kinase)が関与することが分かった。SykはLIPUSや伸展刺激、遠心による圧刺激によってそのリン酸化が亢進した。興味深いことに、MSCが骨分化または脂肪分化するとSykの発現は減少し、未分化MSC特異的なLIPUSおよびメカニカルストレス刺激のシグナル伝達分子として機能していることが示唆された。LIPUSによるSykの活性化を特異的阻害剤やsiRNAによって妨げると、LIPUSによって誘導されるMSCの分化能維持効果が抑制されたため、SykはLIPUSを用いたMSCの分化能維持培養法においてキーとなる分子であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋骨格の維持再生において重要なMSCの有用な培養法を見出すことに成功し、部分的に分子メカニズムで重要となるシグナル伝達分子や転写因子を明らかにすることができた。これらの機構は、MSCの異なる細胞株やマウス由来の初代細胞でも確認することができており、LIPUS以外のメカニカルストレスについても比較的良好な結果を得られている。本研究成果の一部は複数の学会で発表しており、超音波医療研究会では若手最優秀演題に選ばれるなど高い評価を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はLIPUSを用いたMSC培養法の細かいパラメーター(時間、出力など)を検討するとともに、ヒト細胞や異なる由来の幹細胞に試行することによって、より臨床的な培養手法の確立を進めていきたい。
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Research Products
(3 results)