2015 Fiscal Year Research-status Report
顎顔面部異常疼痛発症における早期分子シグナルとmicrogliaの関与
Project/Area Number |
15K20378
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
韓 仁陽 (清本聖文) 昭和大学, 歯学部, 助教 (00712556)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | microglia / 異所性異常疼痛 / 三叉神経 / allodynia / 顎顔面部領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績の概要として以下の点を示す。 まず、僧帽筋炎モデルラットを作製した。SD雄性ラット7週齢♂を用い、僧帽筋に起炎物質であるcomplete Freund’s adjuvant(CFA)を30μL投与したものをmodel群とし、生理食塩水30μL投与したものをSHAM群として両者を比較検討する実験を行った。 顎顔面部異所性異常疼痛検討する目的で、顔面部皮膚に機械的な刺激を見る実験にてよく使用されるvon Frey filamentを用いて、両者の経日的行動学的変化を測定した。 結果、model群においては、術後一日後より逃避閾値の低下が認められた。さらに逃避閾値の低下は、4日目に最も有意な差を認めた。観察結果より、機械的な痛覚過敏が生じたと考えられる。しかしながら、術後1日目からSHAM群と比べ、model群では逃避閾値の低下が認められている。尚、低下した逃避閾値は術後15日後にSHAM群と同じくらいまで戻った。また、4日目まで、閾値の低下が続いている点から、術後から4日目以前の早期段階において何らかの分子メカニズムが働いている可能性が示唆される結果が得られた。 上記の経日的行動観察結果の影響を、さらに検討する為に中枢神経系にフォーカスを当てた。最も有意差を認めた4日目にて、von Frey filamentで刺激した顎顔面部皮膚に存在する侵害受容ニューロンの投射部位である三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)及び上部頸髄(C1-C2)におけるmicrogliaの活性を観察した。microgliaはmicrogliaの特異的なマーカーであるIba1にて免疫組織化学的に検討し活性化の面積を測定した。結果、microgliaの活性が術後4日目にて有意に認められた。なお、補足的な実験結果として術後15日目においても同様の検討を加え、両群に差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究において、早期段階におけるmicrogliaの組織学的な検討が、現状滞っている状態である。購入した抗体が、保存状態の兼ね合いなのか、以前のような染色が出ていない。問題として、実験室の器具等の管理も考えられるが、現状、本年に入り、器具の管理や保存方法の変化から改善がみられている。 また、タンパク定量分析を行うWestern blotting法のシステムの構築の一部がうまくできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
complete Freund’s adjuvant(CFA)を投与したmodel群と生理食塩水を投与したSHAM群とで顔面部皮膚に機械的な刺激をした際の経日的な変化を比較検討した際、4日目で有意な差が認められた。また、術後一日目にて顎顔面部皮膚に機械的な痛覚過敏が発症している可能性が示唆された。 今後、1日目のmodel群およびSHAM群を用い、顎顔面部皮膚に存在する侵害受容ニューロンの投射部位である三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)及び上部頸髄(C1-C2)におけるmicrogliaの活性を精査する。 さらに発症初期におけるmicrogliaの活性がどのようなシグナルを通して生じるかを検討する。先行研究等を参考にし、ATP/P2X7 signaling pathwayの関連があるかを免疫組織学的検討にて行う予定である。具体的には、microgliaとATPのレセプターであるP2X7が共発現しているかを検討する。また、Western blotting法を用い、ATPの定量を行う予定である。 冒頭で記した機械的刺激に対する経日的な行動学的変化が認められる点から、Model群の観察結果をスムーズに他の実験に応用しやすくなっている。 また、申請者の過去の研究結果にて、異所性異常疼痛に、microgliaにおけるFKN/CX3CR1 signaling pathwayの存在を見ている為、その関連性から、異所性異常疼痛の早期分子メカニズムには、FKN/CX3CR1を影響させる分子が考えられる。その経路が、過去の論文等を参考に考えられるATP/P2X7 signaling pathwayであり、さらには、その後のCatepsinS(CatS)の経路である。よって、今年度は、ATP、P2Y7およびCatSの経路にフォーカスを当てれば、昨年度の自身の結果を踏まえて推進しやすいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究において、研究室にて、研究環境を整える点に多少難航した点があげられる。また、体系化された行動学的な実験ではあるが、結果が得られるまで試行錯誤を生じた部分があった。現状、Model群における行動学的実験結果と免疫組織学的実験結果が得られている。しかしながら、申請書類に記載したタンパク定量に伴うWestrn blotting法の準備・実施が昨年度は予定通り進行しなかった。今回得た実験結果を踏まえ、更なる免疫組織化学的な実験を行う必要があり、加えて一部、早期分子メカニズムに対するタンパク質の定量をWestrn blotting法にて行う必要性がある。しかしながら、冒頭で示したようなことから、次年度の使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
僧帽筋にCFAを投与したModel群と生理食塩水を投与したSHAM群での機械的刺激の比較を行った際、顎顔面皮膚の機械的痛覚過敏の経日的行動学的変化が認めらた。今後は行動学的変化を踏まえて実験計画を推進する。行動学的変化は手術後からmodel群において低下を示す。今後、手術後1日目のModel群の中枢神経系で早期に関与する分子メカニズムに焦点を当てる。その為、今後は一日目における異所性異常疼痛に関与するであろう分子メカニズムを解明するために中枢神経におけるmicrogliaとP2X7レセプターの免疫組織化学的な検討を加え、P2X7レセプターのリガンドであるATPに関してWestrn blotting法を用いて検討する予定である。こうした点から次年度においては抗体・試薬等に使用する予定である。
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