2015 Fiscal Year Research-status Report
LAIのキャビテーション作用機序の解明と新規LAIチップの臨床応用の確立
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15K20398
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐竹 和久 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (90707259)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Er:YAGレーザー / 半導体レーザー / キャビテーション / 根管洗浄 / 根管側枝 / 蒸気泡 / 高速度カメラ / 圧力測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、歯内療法における新たな根管洗浄法として考案された、レーザー照射装置を応用したLAI(Laser-Activated Irrigation)のキャビテーション作用機序を解明し、新規LAIチップの臨床応用の確立することである。 平成27年度の研究実績は、以下のとおりである。 1.根尖孔外の圧力の測定について、我々は従来のシリンジを用いた根管洗浄、超音波を用いた根管洗浄、Er:YAGレーザーを用いた根管洗浄、半導体レーザーを用いた根管洗浄の4群に対し実験を行い、比較した。その結果、超音波を用いた根管洗浄、Er:YAGレーザーを用いた根管洗浄、半導体レーザーを用いた根管洗浄における根尖孔外に生じる圧力は、従来のシリンジを用いた根管洗浄に比べ有意に低かったことが示された。LAIによる根尖孔外への根管洗浄液の溢出の可能性はあるものの、LAIは従来のシリンジを用いた根管洗浄と比較して相対的に安全性が高く、Er:YAGレーザーおよび半導体レーザーを応用した根管洗浄は将来的に有望であると考えられる。 2.高速水流の流量分布の解明について、我々は波長810nm半導体レーザー、波長980nm半導体レーザーを用い、異なる条件下の4群に対し実験を行い、比較した。その結果、特定の条件下で波長980nm半導体レーザーを用いた照射において,波長810nm半導体レーザー照射よりも大きな蒸気泡が数多く観察された。 3.根管側枝の洗浄効果について、我々は従来のシリンジを用いた根管洗浄、超音波を用いた根管洗浄、Er:YAGレーザーを用いた根管洗浄の3群に対し実験を行い、比較した。その結果、特定の条件下でEr:YAGレーザーを用いた根管洗浄における側枝の洗浄効果が、他の2群よりも有意に高かったことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに我々は、概ね当初の予定通り、1.根尖孔外の圧力の測定、2.高速水流の流量分布の解明、3.根管側枝における洗浄効果の測定について、日本歯科保存学会での報告を行った。またレーザー照射装置の応用の可能性を探索するため、Er:YAGレーザーを外科的歯内療法に応用し感染除去を行い、治癒の得られた症例につき、日本歯科レーザー歯学会にて報告を行った。これら3回の国内発表および1回の国際学会での発表を行った。本研究における基礎的な結果は臨床応用にあたり、従来の治療法に比較して良好な結果を得られる可能性を有している。当初の計画にあった、LAIにおけるキャビテーション発生の分布の解析については、実験モデルに関して再考の余地があると考え、平成28年度での実行を考えている。これまでに海外の学会において情報収集を行ったが、我々の予想よりもこのテーマについての研究の進行が早く、他の研究機関での成果を参考に実験計画の修正を行う必要があると考えている。同時に、このLAIを用いた根管洗浄に関し世界中が関心を抱き研究を進めており、既に臨床での検証を行っている海外の機関も確認している。従ってこの手法が将来的に極めて有望であるとの確信に至っている。以上より、当初の計画通りおおむね順調に進行していると言えるが、海外の研究機関の動向を注視すべきであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.根管形成を行った透明根管模型に蒸留水とルミノール水溶液にNa2CO3を加え調整した根管内に満たし、LAIを作用させる。ルミノール反応による発光は暗室で撮影可能な高速度カメラを用いて単位時間当たりのキャビテーション反応分布を計測する。 2.マイクロCT による複雑な根管形態におけるLAI の洗浄効果の作用分布の試料としてイスムスを含むヒト抜去下顎近心根を使用する。根管形成、根管洗浄を行い、試料根尖部に注入した水酸化カルシウム材の量をmicro CTおよび解析ソフトを用いて形態観察および測定を行う.その後,試料を無作為に以下の3 群に分ける。Er:YAG レーザー照射群、超音波洗浄群、従来の方法で洗浄を行うEDTA+NaOCl 群の3 群について実験を行う.最終的に根管内に残存した水酸化カルシウム材の量を再度micro CT にて測定,形態観察を行い,水酸化カルシウム材の除去率を算出する。また複雑な根管部(イスムス)における除去率を算出する。各洗浄方法での削片除去効果について、評価が一致するかどうかを算出し、統計学的解析を行う。 3.以上の実験を行った後、得られたデータをもとに企業に我々が現在考案している新しいチップの製作を依頼する。その新規チップを用いて再度1.-4.の実験を行い通常の照射チップとの挙動の比較を行う。その後、実際にEr:YAG レーザーおよび新規チップを使用する群と通法の歯内療法を行った群に分け、前向き調査にて最低6 ケ月の予後追跡を行う。術者は臨床経験5 年目以上の歯内療法担当医とする。また予後は根尖病変の治癒形態をMolven らの分類に従って評価、また臨床症状の有無について評価する。抜去歯を用いた研究が予定通り進まない場合には、アクリル製モデルやプラスチックピペットチップを用いた、より簡単な実験モデルによる実験を行い、研究を継続する。
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Causes of Carryover |
執筆予定である論文の翻訳料を人件費・謝金として考えていたが、平成27年度での執筆が叶わなかったため、当該助成金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度での論文執筆ならびに英文翻訳を予定しており、その他に関しては当初の計画通りである。
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Research Products
(4 results)