2015 Fiscal Year Research-status Report
組み替えDPPタンパク質を利用した硬組織再生誘導法の確立
Project/Area Number |
15K20405
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小武家 誠司 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (50744794)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歯内治療学 / 保存修復学 / 象牙質 / 組み替えタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨や歯牙では様々なタンパク質が協調的に作用し組織形成や石灰化が引き起こされる。これら硬組織に高発現するDentin phosphoprotein (DPP) は、高度にリン酸化されたSer-Ser-Asp繰り返し配列(SSD配列)を持つ細胞外基質で、近年、積極的に近傍細胞を刺激する分子であることも明らかとなってきている。本研究では、組み換えDPPタンパク質並びに繰り返し配列を短縮した改変型組み換えDPPタンパク質を作製し、これら組み換えタンパク質が未分化間葉系細胞の硬組織形成細胞への分化に与える効果を検討し、更に、細胞外基質石灰化モデルを用いて硬組織細胞外基質としての活性を評価し、硬組織誘導・再生材料としての有用性を細胞刺激因子・基質双方の観点から検討し、将来的なヒトへの応用のための基礎的データを得ることを目的としている。 今年度はまず組み換えDPPタンパクの精製方法の改良を行った。これまでの研究で、DPP cDNAを遺伝子組み換えタンパク発現ベクターに導入し、6xHis Tagを利用し遺伝子組み換えDPPタンパクを293細胞上清より精製している。この上清にInsulin-Transferrin-Sodium Selenite Supplement (ITS) を添加し、組み換えタンパク産生細胞の無血清培地中での生存と分泌量の増加に効果があるかを検討したところ、著しく組み換えタンパク分泌量が増加した。更にHi Trap Q Column (GE Healthcare) で前精製を行うことでNi-NTA agaroseによるaffinity chromatographyを阻害する可能性のあるITS中に含まれるTransferrinを除去することができた。組み換えDPPタンパク質の発現量はSSD配列を短縮するほど培養上清中に分泌されることが明らかとなり、SSD配列を欠失した組み換えDPPタンパク質では、欠失していない組み換えDPPタンパク質よりも多くの分泌量を認めた。将来的な臨床応用を想定したタンパク質作製のコストを考慮すると、繰り返し配列の短縮が有用であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各種組み換えDPPタンパクを用いての細胞刺激活性の検討を平成27年度の達成目標としていた。純度の高い各種組み換えタンパク質の作製に至ったが、現在これら組み換えタンパク質の細胞刺激活性を検討している段階であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
前骨芽細胞株MC3T-E1やヒト未分化間葉系幹細胞の上清に各種SSD配列短縮型組み換えDPPタンパク質並びに、これまでの研究で見出した活性の高い切断型DPPタンパク質を添加し、過剰発現株の実験系と同様に、長期培養した際の硬組織形成分化への影響を、アルカリフォスファターゼ染色及びアリザリンレッド染色にて検討する。また、骨分化マーカー(Runx2, osteocalcin, osterix) mRNA発現レベルの硬組織形成分化誘導時の経時的な比較をreal-time PCRにより定量的に検討する。SSD繰り返し配列の短縮は組み換えタンパク質の収量を上げるものの、過度の短縮は石灰化誘導能を欠失すると考えられるため、細胞外基質石灰化モデルを用いて、各SSD短縮型DPPタンパク質のリン酸およびカルシウム沈着量を計測する。続いて、ラット実験的露髄面ラット及び実験的歯周炎骨欠損モデルへの組み換えDPPタンパクの填入による硬組織再生誘導の評価を行う。実験プロトコールの提出と本学審査委員会の承認を得る。ラット上顎第一臼歯に作製した実験的露髄面に上記各種組み換えDPPを填塞し、その覆髄効果について検討する。露髄た後に、各種組み換えDPPタンパク質溶液を浸漬した0.5mm四方大のコラーゲンスポンジを髄腔内に静置し、セメントにて被覆する。、μCT(広島大学共通機器: MutliScan)を用いて新生硬組織の石灰化度を原生象牙質と比較検討する。実験的歯周炎モデル構築は、ラットの第一臼歯周囲に糸を巻き、2週間程度糸を滞留させることで歯周炎症を惹起し閉鎖型骨欠損を作製する。骨欠損部に精製した各種組み換えDPPタンパクを填入し、その新生骨組織形成能は同様にμCTを用いて定量的検討する。
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Causes of Carryover |
概ね予定通りの金額で研究が進行しているが、若干の差額が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は使用予定額の大半を組み換えタンパク質作製に関わる費用等、分子生物学試薬の購入に充てる予定である。
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