2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K20407
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
杉本 浩司 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (40646113)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低酸素培養 / HIF |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では低酸素環境下でのヒトiPS細胞へのHIFの働きについて検討を加えた。 実験にはヒトiPS細胞(201B7, 253G1)を用い、酸素濃度5%を低酸素条件に設定した。ヒトiPS細胞を5%および20%O2の条件下で14日間培養し、形態学的観察に加え、ALP染色されたコロニー数の測定、未分化マーカー発現のRT-PCR解析を行った。さらに、siRNAにてHIFαの発現をノックダウンしたヒトiPS細胞を5%O2下で7日間し、細胞形態、未分化マーカーmRNAの発現量を比較した。 両ヒトiPS細胞において、 低酸素条件下では20%O2下よりALP染色された未分化状態のコロニー数は有意に多かった。低酸素条件下では20%O2下より未分化マーカー遺伝子の発現量も増加していた。siRNAを導入後、HIF1αをノックダウンした群では、両iPS細胞ともに対照群と同様にiPS細胞のコロニーを形成した。253G1細胞ではHIF2αをノックダウンした群で、コロニーは形成するもののコロニーサイズが減少していた。HIF3αをノックダウンした群では、HIF1αをノックダウンしたときと同様に、対照群と同じようにiPS細胞のコロニーを形成した。 HIF1αをノックダウンした群では、未分化マーカーであるNanogの発現量は対照群と有意差はなかった。HIF2α, HIF3αをノックダウンした群では、対照群と比較して、Nanogの発現量は有意に減少していた。 低酸素環境下では、マウスiPS細胞と比較して細胞生存率が低い解凍後のヒトiPS細胞の増殖を増大させることができた。また、ヒトiPS細胞でもHIFの働きにより未分化状態が維持されていることが明らかにできた。今回の結果から、HIFsのうち特にHIF2α, HIF3αの働きによりiPS細胞の未分化多能性は調節されていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度にヒトiPS細胞の培養方法の習得に時間を要したため、計画より進行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、HIFによるヒトiPS細胞の未分化能の調節機構についてさらに検討を加える。 その際、Stat3経路に着目し、その経路の抑制/増強の有無によるHIFの発現を検討し、ヒトiPS細胞の未分化調節機構との関連を解明する。
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Causes of Carryover |
初年度の実験進行状況が遅延したため、次年度にさらに実験を行う必要があるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
iPS細胞培養に必要な培地、feeder細胞ならびにreal-time PCRおよびウェスタンブロッティングを行うための消耗品に使用する予定である。
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