2015 Fiscal Year Research-status Report
NF-κB阻害因子MTI-Ⅱを用いた炎症制御による歯髄・根尖歯周組織再生法の開発
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15K20409
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
土屋 志津 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60610053)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | NF-κBシグナル / 炎症抑制 / 骨芽細胞分化 / 象牙芽細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は、歯髄または歯根周囲に生じた病変に対する治療において、慢性炎症を制御し組織再生を誘導する治療法を確立することである。本研究では炎症抑制効果を持つステロイドコアクチベーターMacromolecular Translocation Inhibitor Ⅱ (MTI-Ⅱ)ペプチドを用い、炎症抑制・組織誘導の両者を同時に行う再生療法の開発を目的としている。 今年度は、in vitro実験系において、象牙芽細胞様細胞株および骨芽細胞株を炎症性サイトカインTNFαで刺激するとともにMTI-Ⅱペプチドを加え、炎症反応および石灰化能に関与する細胞内分子を検討した。 骨芽細胞株MC3T3-E1細胞をTNFαで刺激すると、 NF-κBの転写活性が著しく上昇した。しかし、MTI-Ⅱペプチドの添加によりMTI-Ⅱペプチド濃度依存的にNF-κBの転写活性上昇が解除・抑制された。次に、細胞をTNFαあるいはMTI-Ⅱペプチドで刺激したところ、MMP-9は、TNFα刺激によって発現増加が認められたが、MTI-Ⅱペプチド添加によりMMP-9の発現増加が解除・抑制された。同様に、IL-6,8,12はTNFα刺激によって発現増加が認められたが、MTI-Ⅱペプチド添加によりその発現増加が解除・抑制された。さらに、TNFαとCOX-2の発現も、TNFα刺激によって発現が増加し、MTI-Ⅱペプチド添加によりその発現増加が解除・抑制された。また、象牙芽細胞様細胞KN-3においては、ALP活性とAlizarin red S染色はTNFα濃度依存的に抑制された。TNFα刺激によって抑制されたALP活性とAlizarin red S染色はMTI-Ⅱペプチド濃度依存的にその抑制が解除された。 MTI-ⅡペプチドはTNFα刺激によるNF-κBシグナルを抑制することで、抗炎症効果を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、in vitro実験系において、象牙芽細胞様細胞(KN-3細胞)および骨芽細胞(MC3T3-E1細胞等)に対するMTI-Ⅱの影響を検討することを予定していた。どちらの細胞株においても、石灰化能を誘導した象牙芽細胞様細胞株および骨芽細胞株を炎症性サイトカインTNFαで刺激するとともにMTI-Ⅱを加え、炎症反応および石灰化能に関与する細胞内分子の発現・活性化を検討することができた。 研究申請の段階では、セルライン化された細胞においてMTI-Ⅱの抗炎症効果が確認できない場合は、ラットあるいはマウスから初代培養細胞を採取しMTI-Ⅱの効果を検証することを計画していたが、現在の結果から、その必要はないと考えている。ただし、最終確認として、セルライン化された細胞のみでなく、ラットあるいはマウスから初代培養細胞を採取して検討することも考慮しなければいけないと考えている。そのため、到達度としては、「おおむね順調に進展していると考えている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は最終確認として、セルライン化された細胞のみでなく、ラットあるいはマウスから初代培養細胞を採取して、TNFαで刺激するとともにMTI-Ⅱを加え、炎症反応および石灰化能に関与する細胞内分子の発現・活性化を検討する予定である。 さらにラットあるいはマウスの臼歯断髄モデルおよび異所性骨誘導モデルを用い、in vivoにおけるMTI-Ⅱが歯髄や骨組織に与える影響について検討する予定である。具体的には、ラット下顎臼歯に断髄を行い、窩洞内に(1)コラーゲンスポンジ単独、(2)MTI-Ⅱ含有コラーゲンスポンジを埋入し、4週間後に3.7%ホルムアルデヒドで固定後、組織切片を作製、HE染色後に組織形態観察を行う。同様に、マウス背筋膜下に(1)コラーゲンスポンジ単独、(2)BMP含有コラーゲンスポンジ、(3)BMPとMTI-Ⅱ含有コラーゲンスポンジを埋入し、4週間後に固定・組織切片作製・HE染色を行い組織形態観察を行うことでMTI-Ⅱが生体の炎症応答に与える影響の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度使用額が計画通りに使用できなかった理由として、MTI-Ⅱペプチドの合成にかかる費用が予定より安価だった点が考えられる。申請当時は、MTI-Ⅱペプチドの効果のある濃度を探すところから始める予定だったため、消耗品代を合成ペプチド10 mg×3回分の計算で予定していたが、in vitroで効果があった濃度が予想より低濃度であったため、10 mg×2回分の購入で実験を行うことができた。以上が次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、in vivoの実験系を予定している。in vitroの実験系ではMTI-Ⅱペプチドの効果は低濃度であったが、in vivoの実験系では、濃度を決定する実験から始めなければいけない。そのため、今年度使用できなかった予算分をMTI-Ⅱペプチドの合成に係る予算として使用する計画である。
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