2015 Fiscal Year Research-status Report
レーザー切削象牙質面のプライマー浸透性と熱変性層の関連性について
Project/Area Number |
15K20417
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
加藤 千景 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 助教 (00459926)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 象牙質 / Er:YAG laser / コンポジットレジン / 共焦点レーザー顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでEr:YAG laserのコンポジットレジン修復への応用に関して国内外問わず数多くの研究報告がみられるが、回転切削と比較してレーザー切削は象牙質接着に劣り、いまだ象牙質接着法は確立されていない。また、Er:YAG laserは本邦で認可され歯科医療保険で臨床使用されているにもかかわらず、確立された象牙質接着法が用いられていない現状からレーザー切削を応用したコンポジットレジン修復歯の予後に懸念がもたれる。これまでの研究結果から、リン酸エッチングやNaClOの併用によりコンポジットレジンと歯質の接着強さの改善は認められるものの、表面処理後の象牙細管は大きく開口していることがわかっている。大きく開口した象牙細管はプライマーの浸透性が向上しているものと考えられ、その深度により健康な歯髄組織へ炎症を惹起する要因になりえるものと考えられる。レーザー切削象牙質面への接着強さの向上は喜ばしいことであるが、歯髄に炎症を惹起するようでは本末転倒であるといえる。そこで本研究では、蛍光色素を混入したセルフエッチングプライマーを象牙質に応用し、その横断面を共焦点レーザー顕微鏡により観察を行うことにより、表面処理と熱変性層の厚みがプライマーの浸透性へどのような影響を及ぼすか明らかにすることを目的としている。また、接着横断面と微小引っ張り強さ試験後の横断面を比較することにより、コンポジットレジンと象牙質接着の問題点の解明とその改善に大きな足掛かりになるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画当初には予定していなかったが、蛍光色素であるローダミンBを混入することにより本来のセルフエッチングプライマーの象牙質浸透性に影響があることが考えられる。そのため研究に先立ち、いろいろな濃度(0,1,3,5,10,20,30%)のローダミンBを混入したセルフエッチングプライマーを回転研磨盤により平面を作成した象牙質面に応用し、応用面に直角となる断面を作成し顕微鏡下で浸透性の観察を行った。その結果ローダミンB濃度が上がるほど象牙質への浸透性は低下していくものの、1%以下であれば遜色ない程度であることがわかった。 回転研磨盤にて咬合面に平行に象牙質面作成後ローダミンB濃度が0.05, 0.06, 0.07, 0.08, 0.09, 1.0, 2.0%となるセルフエッチングプライマー(クリアフィルボンドSE ONE)にて歯面処理を行った。メーカー指示に従い弱圧エアーにて乾燥後光照射を10秒間行った。硬組織自動精密切断機にて象牙質面に直交する面を作成し#600、#1000、#2000の耐水研磨紙を用いて切断面の研磨を行い共焦点レーザー顕微鏡(LSM710)による観察を行った。その結果、0.07~1.0%の濃度のものが蛍光度合いが観察に適していることがわかった。 当初の計画では各ローダミンB濃度の引っ張り強さ試験まで行いローダミンB濃度決定まで行う予定であったが、計画になかったローダミンBによるプライマーの浸透性の違いについて検討を行ったため若干の遅れをきたしている。しかし、研究の遅れは1か月程度であり、進捗状況にあまり問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に行う予定であった象牙質面に各ローダミンB濃度のセルフエッチングプライマーを応用したものの微小引っ張り強さ試験を行い、ローダミンBの濃度を決定する。その後以下の研究を行う。 【レーザー切削象牙質面の共焦点レーザー顕微鏡による観察】①Er:YAG laserを注水下にて(50mJ/10pps照射、150mJ/10pps照射、250mJ/10pps照射、50mJ10pps照射後150mJ/10pps照射)にて窩洞形成を行う。②各種表面処理(リン酸エッチング30sec、リン酸エッチング30sec+NaClO 60sec、EDTA60sec、処理なし)後、蛍光色素含有セルフエッチングプライマー処理を行い、接着界面に対し直角となるような断面を作成する。③共焦点レーザー顕微鏡にて樹脂含浸層および象牙細管に浸透したプライマーの浸透性の観察を行う。 【アザン染色による熱変性層の確認】上記①~②と同様に試料を作成し、脱灰・中和・包埋後連続切片を作成しアザン染色を行いプライマーの浸透性と比較を行う。 【微小引っ張り強さ試験】①と同様に作成した象牙質面に開窓した両面テープで直径6mm高さ3mmの透明アクリルチューブを固定する。②と同様の歯面処理を行った後、コンポジットレジン充填を行う。③蒸留水中に浸漬し恒温恒湿器中に24時間保管後、硬組織自動精密切断機にて接着界面が1×1mmとなる角柱型ビーム試料を作成する。④小型卓上試験機にてクロスヘッドスピード0.5mm/minで微小引っ張り接着試験を行う(n=20)。⑤引っ張り強さ試験に用いた試料の共焦点レーザー顕微鏡による観察を行う。 微小引っ張り強さ試験前後、アザン染色による熱変性層の厚さの観察を行い、レーザー照射象牙質へのプライマーの浸透性と熱変性層がコンポジットレジンの接着にどのような影響を与えるか検討を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度に行う予定であるアザン染色時に使用するラボシェイカーSRR-2の購入を行わなかったため。平成27年度はなくても研究に差しさわりがなかったため購入を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
脱灰時にラボシェイカーは必要であるため、ラボシェイカーSRR-2を購入予定である。
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