2016 Fiscal Year Research-status Report
バイオフィルム代謝活性評価と表面腐食評価によるチタンの生物学的腐食モデルの構築
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15K20423
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福島 梓 東北大学, 大学病院, 助教 (50733565)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | チタン / バイオフィルム / 腐食 / フッ化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科用インプラント材料や義歯床用材料としてチタン・チタン合金が広く用いられているが、近年、チタンの生体内における微量溶出に起因すると考えられるアレルギーの発症や、腐食・変色などの問題が懸念されている。また、チタン表面に形成されたバイオフィルム構成細菌の代謝活性によって、チタンの腐食が生じると予想される。加えて、効果的なむし歯予防剤として広く用いられているフッ化物によって腐食することが報告され、チタン製のインプラントや義歯の使用者はフッ化物配合歯磨剤の使用を避けるべきと推奨する意見も出されている。 これまでのチタンの腐食に関する研究は、細菌非存在下での浸漬実験が主であり、バイオフィルムのチタンへの影響は不明である。また、フッ化物の影響については、バイオフィルム構成細菌の代謝抑制作用によりpHの低下が抑制されると予想される。しかし、これまでのフッ化物による腐食研究においても、細菌非存在下で行われており、フッ化物によってpH低下が抑制されることでバイオフィルム直下のpHが比較的安定した状態であると予想される実際の口腔内を模した研究とは言い難い。 そこで、昨年度までに構築したバイオフィルム-チタン腐食モデルを用いて、チタン表面にStreptococcus mutansの人工バイオフィルムを形成し、フッ化物存在下におけるバイオフィルム代謝活性およびチタンの腐食性評価を行った。 その結果、バイオフィルム存在下ではわずかに腐食傾向の増加が認められたが、フッ化物の有無による変化は認められなかった。また、低pHのフッ化物溶液への浸漬によって、腐食傾向増加、色調変化、光沢度低下、チタン溶出が認められたが、中性環境下ではフッ化物による変化は認められなかった。 本研究成果を国際学会にて発表し、意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、チタン-バイオフィルムモデルを構築し、チタン表面腐食性評価法の確立に成功した。さらに、当初の研究計画に加えて、フッ化物の影響について検討することが出来た。 しかし、実際の患者口腔内から採取した臨床サンプルでの分析については実施できていないことから、研究計画全体としては、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
SEMやEDXを用いたチタンの表面分析についても検討するとともに、実際の患者口腔内から採取したインプラントや義歯床、クラスプ等の変色部位のチタンを採取し、さらに、プラークや唾液、歯肉溝浸出液中へのチタン溶出量を測定を検討する。これにより、臨床サンプルにおけるチタン腐食性について臨床的評価を行い、これまでのin vitroの結果と比較検討し、腐食の臨床指標の確立を目指す。 また、フッ化物のチタンへの影響についても評価を行い、その結果に基づき、歯科用チタン使用者のフッ化物使用に関する臨床指針の提言を目指す。
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Causes of Carryover |
チタン表面分析を実施できなかったため、分析費用としての次年度使用額が生じた。 また、国際学会において発表予定であったが、国内開催の国際学会での発表となったことから、外国旅費分が次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
チタンサンプルの追加作成料および、チタン表面分析時の装置使用料として使用する予定である。 また、国外開催の国際学会において旅費として使用する予定である。 さらに、分析装置のソフト使用に必要なノートパソコン等の購入に充てる予定である。
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