2016 Fiscal Year Research-status Report
プラーク染色剤を用いた新しいPACTの提案～訪問・在宅診療での応用を目指して～
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15K20424
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| Research Institution | Tohoku University |
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Principal Investigator |
石山 希里香 東北大学, 歯学研究科, 教育研究支援者 (20712904)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | PACT / 光線力学療法 / 光線力学殺菌療法 / バイオフィルム / 殺菌 / ローズベンガル |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究はCandida. albicans（C.a）を含むデンチャープラークに対して、光線力学殺菌療法（Photodynamic antimicrobial chemotherapy；PACT）を用いる義歯洗浄の臨床研究に向けた、基礎的データの集積を目的としている。昨年度、当研究室でバイオフィルムの作製が確立されている口腔内細菌の一種であるStreptococcus. mutans（S.m）の実験的バイオフィルムに対するPACT殺菌効果や、光感受性物質として本モデルに最適であるローズベンガル（RB）の色素取り込み試験の結果等の研究成果を外部に発信すべく、英文での論文執筆を行い、何度もやり取りを重ねたのちに無事publishされた。
口腔内で形成されるバイオフィルムは多数の菌による複合的なバイオフィルムであり、単一菌によるバイオフィルムとはその構造や抵抗性が異なると考える。C.aとS.mを混合させてバイオフィルムを構築する予備実験を幾度となく重ねたが、S.m単一の実験的バイオフィルムのような構造のバイオフィルムを作製することができなかった。しかし、他の論文ではmulti-speciesの実験的バイオフィルムを実験試料として用いているものがあるため、複数菌が混在したかたちのバイオフィルムを構築し、最終年度に予定している臨床研究を申請できるように進めていく。
また、48時間培養して作製したS.mバイオフィルムに対してLIVE/ DEAD染色を施し、PACT殺菌がバイオフィルムの中まで浸透しているかを評価し、デンチャープラークが存在するレジン孔の中まで殺菌可能かを判断する。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度から始めた英文論文執筆に時間が割かれてしまったこと、C.aとS.m混合の実験的バイオフィルムの構築が確立できなかったこと、この2つが大きな要因だと考える。
論文に関しては、何回かやり取りを行い加筆修正した後、今年度中に査読付きの学術雑誌Biocontrol Scienceに掲載することができた。混合菌のバイオフィルム構築については、上記2種類以外の口腔内細菌を供試して培養することによりバイオフィルムが作製できる可能性がある。
また、532 nmの緑色レーザー光とキサンテン系の光感受性物質としてのローズベンガルの組み合わせによるPACT殺菌に関して、以前のバイオフィルム作製プロトコールと異なる方法で作製したS.mバイオフィルムに対して行ったPACT殺菌は再現性が難しく、安定的な結果を集積するのに時間がかかってしまった。これは、新たな作製プロトコールとして、96ウェルのセル底に静置して構築していたものから、自動攪拌機を用いて培養時間中に動的にバイオフィルムを構築するモデルへと改良したため、常に培養環境が一定でないバイオフィルムはその構造も一定でなく、PACT殺菌効果へ影響を与えたと考える。口腔内環境には、後者の動的に作製したバイオフィルムの方が生物学的構造が近いと考えらえるため、光感受性物質の濃度やレーザー光の照射強度の条件を洗い出し、動的バイオフィルムに対して十分な殺菌効果が得られる条件を探索することが先決となる。
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| Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究を総括して得られた課題がいくつかある。最終年度に予定している臨床研究に進むため課題を解決しながら、①multi-speciesの実験的バイオフィルムの構築、②そのバイオフィルムを対象としたPACT殺菌効果の検証、③532 nmの緑色レーザー光の照射強度と光感受性物質（RB）の濃度に関する、最適な殺菌条件の探索、④LIVE/ DEADキットで染色しバイオフィルム内の菌の生死評価、⑤倫理委員会への申請、⑥被験者の義歯から採取したデンチャープラークを対象としたPACT殺菌試験、という研究予定である。
また、バイオフィルムの成熟度合とPACT殺菌の関係性を明らかにしたいと考えている。本研究で用いている光感受性物質（RB）は、臨床現場で歯垢染色液として用いられている色素である。このため、本モデルのPACTは日常の歯みがきにも応用できると考え、日本人の平均一日歯みがき回数である2回を参考に、培養時間を6～24時間としたバイオフィルムでのPACT殺菌効果を検証し、PACT殺菌の適応範囲の可能性を広げたいと考えている。
さらに、現在の殺菌試験方法ではバイオフィルムにレーザー光を照射する際に10mm程度の高さで液体が存在しているため、実際に対象物に照射する強度は減衰していることも考えられる。RBはバイオフィルム表面に吸着するため、RBを溶解させた液体を抜き取ったうえで殺菌試験を行い、その効果を検証したいと考えている。
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| Causes of Carryover |
C.aを含めたかたちのバイオフィルム構築がうまくいかなかったため、PACT殺菌の最適な条件探索ができず、共焦点レーザー走査型顕微鏡関連、デュアル型レーザー実験装置に関する支出が翌年度に繰り越しとなった。投稿していた論文がpublishされるまで学会発表は控えていたため、学会参加も今年度は行わなかった。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
LIVE/ DEADキット染色でのバイオフィルム内の菌の生死解析や、成熟過程でのバイオフィルム様相の解析等を共焦点レーザー走査型顕微鏡で実施するため、関連費用の支出が見込まれる。デュアル型のレーザー実験装置の発注も翌年度に行う予定である。また、殺菌の最適条件探索後、倫理委員会に申請し臨床研究を行う計画であり、この臨床研究では被験者の義歯からプラークを採取するため、患者への謝金が発生する。謝金を含めた臨床研究の研究費に充てる。
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