2015 Fiscal Year Research-status Report
フッ素系モノマーを応用した生体親和性と耐久性の高い硬質リライン材の開発
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15K20448
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高瀬 一馬 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (90736836)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 義歯 / リライン / フッ素系モノマー / 生体適合性 / 動力学的性質 |
Outline of Annual Research Achievements |
予防歯科の重要性を問われる昨今、歯科材料におけるデジタル化には目をみはるものがある。しかし一方で、数十年もの間主要物性が変わらず、相変わらず一般臨床において使用されている材料があるのもまた事実である。超高齢社会を迎えた日本では、インプラントの台頭もある中、義歯の需要が減ることは考え難い。インプラントオーバーデンチャーもそうであるように、義歯はその適合性が患者の生理的現象、義歯の劣化などにより継時的に低下する可能性が示唆されている。そのため義歯の新製や修理などを行うわけだが、粘膜面の適合性の低下の場合リラインが最も多く施術される方法ではないだろうか。リラインとは義歯の粘膜と接触する部位のみを修理する方法で、その材料としては短期に用いるもの、長期に用いるもの、物性的に軟質のもの、硬質のものと多岐にわたる。今回我々が行っている研究では、このリライン材の新しい材料を開発しようと試みている。 義歯が不適合になると口腔粘膜に傷がつき患者に不快な思いをもたらす。そこで、粘膜面を短期間用のリライン材で治癒させた後に、硬質もしくは軟質のリライン材で長期安定性をもたらすというのが具体的な方法である。義歯と口腔粘膜は直接接していることから、このリライン材の生体適合性は十分に優れたものである必要性がある。そこで我々はフッ素系モノマーを配合したリライン材、さらには市販製品数種類を用い、ヒト歯肉線維芽細胞および角化細胞による多層培養による細胞毒性試験を行った。この結果、フッ素系モノマーの配合されたリライン材では他の物と比較した際にその生体適合性がすぐれていることがわかった。さらに同材料の動力学的性質を調べるため、動的粘弾性自動測定装置および示差走査熱量測定を行い、それらの材料学的性質を知ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生体適合性試験においては、ヒト口腔粘膜の模倣にさらに近づける必要があると考えている。以前はプライマリーな細胞を使用していたが、現在セルラインへと移行し再実験をおこなっている。もし可能であれば、血管系の再現なども検討したいが現状では難しい。またその評価方法が、基本的に単層培養での基準となっており、多層培養の際には単層とは違った評価方法が必要であると考えている。そのため積層したものをホルマリンにて固定し、切片を作製することによりどの細胞層まで影響が出ているのかを測定するように試みている。 リライン材の継時的変化にCandida albicansによる感染がある。劣化してしまった材料は温床となってしまい、義歯による潰瘍ではなく、感染による粘膜炎の惹起が問題視されている。よって、Candidaに対する抵抗力を検討する必要性があると考えている。同時に材料劣化に伴う抵抗力も検討することにより、他の材料との差別化を図ろうとしている。 平成28年4月よりNIOM(Norway)へ留学のため、一時実験を中断する。 以上のことより、追加実験が増えたため当初の予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
生体適合性試験に関しては前述の通り、ヒト歯肉線維芽細胞と口腔粘膜角化細胞を使用し積層培養を行ったのち、切片を作製し評価を行う。 Candida albicansの実験に関しては、通法どうりその接着を調べると主に、材料の劣化による相違を検討する。なお、その後、義歯洗浄剤の効果についても評価を行う予定としてる。 材料学的な観点から、既存の市販製品におけるモノマー内の構成成分の同定をHPLC、ガスクロなどを用いて測定し、フッ素系モノマーに関して、その配合量などの検討は理工学教室ならびに工学部関係の先生方にご教授願う予定としている。
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