2016 Fiscal Year Research-status Report
抑うつ、心疾患の抑制に効果的な咀嚼運動の神経科学的解明
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15K20459
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
山田 健太朗 神奈川歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (10550816)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 咀嚼 / 抑うつ / 心疾患 / 島皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳半球の島皮質領域は自律神経系、大脳辺縁系、前頭前野と相互連絡を持ち、自律神経機能、内臓知覚機能、内臓運動機能、辺縁機能の統合野と目されている。したがってこの領域は中脳、及び延髄網様体に投射経路を持ち、感情の起伏に伴う心臓拍動の変動を担う領域とされる。本年度は、ラットを実験動物として、この領域における対照群、ストレス群、ストレス中にチューイングをする群それぞれにおけるpERK免疫陽性細胞の動向を検索した。島皮質は前部島皮質と後部島皮質に分けられる。pERK (phosphorylated extracellular signal-regulated kinase)は早期応答性の神経細胞を検出する方法であり、我々をはじめ、多くの研究者が利用している。 対照群の島皮質にはごく少数のpERK免疫陽性細胞が観察された。一方、ストレス群では多数のpERk免疫陽性細胞が認められた。このストレス誘導性のpERK免疫陽性細胞の増加はストレス中にチューイングさせることによって抑制された。この抑制効果は後部島皮質よりも前部島皮質において著明であった。 前部島皮質は、特に痛覚関連情報の統合野と目されていることから、チューイングのストレス抑制効果は、脳内の痛覚関連領域において、顕著であることが示唆される。すでに発表した結果であるが、中脳中心灰白質におけるストレス誘導性のpERK免疫陽性細胞のチューイング抑制効果が最も顕著であった領域も痛覚関連領域であった。このことから、ストレス中におけるチューイングのストレス軽減効果は、特に、脳内の痛覚関連領域であることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ストレス応答性神経細胞の検出方法としてc-fosではなく、pERKにしたことにより本研究がおおむね順調に進んだものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
抑うつ、心疾患に関わると考えられる上位脳内構造は多々あり、本年度はその中の島皮質に着目した。今後それ以外の上位脳内構造、すなわち大脳辺縁系(情動の最高次中枢)に含まれる扁桃体や帯状回に着目して研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
神経細胞の種類の同定のために、当初購入予定であった抗体(二重染色用)が、本年度研究対象とした島皮質では必要がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、脳の帯状回、扁桃体に着目して研究を進める。この領域では神経細胞のタイプを同定する必要が生じるので、この二重染色用の抗体を購入する予定である。
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