2015 Fiscal Year Research-status Report
フルオシノロンアセトニド(FA)を用いた変形性関節症の予防・治療法の開発
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15K20480
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
笈田 育尚 岡山大学, 大学病院, 医員 (50625720)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フルオシノロンアセトニド(FA) / 軟骨細胞分化 / 軟骨再生 / ヒト骨髄由来間葉系間質細胞(hBMSCs) |
Outline of Annual Research Achievements |
介護保険の要支援原因疾患の第一位は関節疾患であり,労働力や生活の質の低下,医療費の高騰などを引き起こす一因と考えられ社会問題となっている.関節疾患の症状の多くは,関節軟骨の退行性変化が疾患の本態である変形性関節症により生じており,関節疾患の治療には関節軟骨の退行性変化への予防・治療法の開発が急務である. そこで我々は軟骨細胞分化の分子生物学的観点に基づいたスクリーニングシステムを構築し,フルオシノロンアセトニド(FA)を強力な軟骨細胞分化促進作用を有する薬剤として同定することに成功した.本研究では,FAの軟骨細胞分化促進メカニズムを解明し,FAを応用した変形性関節症の予防・治療法の開発を目的とした. FAの軟骨分化促進作用のシグナル伝達経路を同定するためpathway arrayを行った.その結果FAはmTOR/AKTシグナルを活性化し,さらにTGF-β3の下流であるSmad2/3も活性化した.In VivoにおいてFAの軟骨再生能を検討するため,軟骨細胞誘導培地にてペレット培養したヒト骨髄由来間葉系間質細胞(hBMSCs)を免疫不全マウスの大腿骨膝蓋面に作製した軟骨全層欠損部に移植し,1ヶ月後に再生した軟骨量を評価した.軟骨細胞誘導効果,関節軟骨再生力は他グルココルチコイドであるtriamcinolone acetonide (TA) ,dexamethasone (DEX)を対照群として用いた.その結果,FA/TGF-β3移植群において,II型コラーゲン陽性の軟骨組織が再生されている像が確認された.一方,非刺激群,TGF-β3単独刺激群,FA単独刺激群のみならず,TA/TGF-β3,DEX/TGF-β3刺激群においても,軟骨再生は認められなかった.以上の結果からFAはhBMSCsの軟骨細胞分化を増強することで関節軟骨再生を強力に誘導することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画ではin vitroの実験を主に行う予定であった.しかし,in vitroの実験が予定以上に進んだため,平成28年度に行う予定であった動物実験も実施可能であり,有益な結果を得ることができた,また,それらの研究の一部を英語論文にて発表することができた.そのため,当初の計画以上に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究に引き続き,FAが持つ軟骨分化促進作用の詳細なメカニズムについて検討を行う予定である.また,これまでにマウス関節軟骨全層欠損モデルにおいて,FAを用いて軟骨細胞分化誘導した骨髄由来間葉系幹細胞を移植し,関節軟骨の再生を試みてきた.臨床の現場では移植される細胞の品質管理,コストの問題から無細胞治療が望まれている.そこで,平成28年度は細胞を用いずに,キャリアーを駆使した軟骨再生療法の開発に取り組む予定である.
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Research Products
(6 results)