2015 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞を利用した歯周組織再生型インプラント開発のための基礎研究
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15K20491
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
山本 竜司 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20410053)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歯科インプラント学 / 骨再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では歯周組織への分化機構を解明し、歯周組織再生型インプラント体開発の可能性の検証を行うことを目的としている。 本年度は1.象牙質シアロリンタンパク質(DSPP)のスプライスバリアントの遺伝子発現解析、2.ラット第一臼歯へのチタンインプラント即時埋入実験を行った。 1.DSPPは翻訳語に象牙質シアロタンパク質(DSP)、象牙質糖タンパク質(DGP)、象牙質リンタンパク質(DPP)の3つの機能的タンパク質に切断されることが知られている。DSPP遺伝子には全体をコードするバリアント1(V1)とDSPのみをコードするバリアント2(V2)のスプライスバリアントの報告がある。今回、歯髄先端部、歯髄本体部、象牙芽細胞からRNAを抽出し、qPCRにて2つのスプライスバリアントについて発現解析を行った。その結果、V1遺伝子は歯髄より象牙芽細胞での遺伝子発現が多かった。V2遺伝子は歯髄先端部と比較し、歯髄本体部、象牙芽細胞での発現の上昇がみられた。この結果より、DSPP遺伝子のスプライスバリアントは歯髄細胞から象牙芽細胞への分化段階と密接に関わっていることが明らかとなった。 2.ラットの第一臼歯を抜歯し、その近心根の抜歯窩にチタンインプラントを埋入後、他の抜歯窩を脱灰骨で被覆し、4週間後に観察した。脱灰骨で抜歯窩を被覆したラットは被覆しなかったものと比較し、優位に脱灰骨で被覆した方向(垂直方向)に歯槽骨が増大していた。また、脱灰骨からタンパク質成分を除去したものと比較しても優位に歯槽骨が増大していた。また、チタンインプラントと歯槽骨の骨‐インプラント接触率も被覆しなかったものに比べて高かった。このことより良好な歯槽骨の再生を促すためには脱灰骨が有効であることがわかった。特に外的骨増生には脱灰骨に含まれるタンパク質も重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は歯周組織再生の中でも特に硬組織の再生について研究を進めてきた。上記1.の研究のDSPPは先行研究でTGF-βとの結合能の報告がある。硬組織再生の鍵となる間葉系幹細胞から石灰化細胞への分化には生理活性物質の関与は明らかであり、生理活性物質がどのように特異的な領域で活性化されるのかが問題となる。今回の研究で、DSPP遺伝子が歯髄細胞から象牙芽細胞へ分化する過程で、その発現がコントロールされていることが明らかとなった。 上記2.の研究ではインプラント治療の骨‐インプラント接触率には、これまでも言われているようにバリアメンブレンの設置が重要であることが明らかとなった。また、今回の研究ではバリアメンブレンに脱灰骨を使用しており、メンブレン中に骨タンパク質が含まれている状態で良好な外的骨増生が認められた。今回の結果から良好な硬組織再生を促すためには石灰化の足場となる材料だけでなく、石灰化細胞を誘導するタンパク質の存在も重要であることが明らかとなった。 これらの研究結果は、今後チタンなどのインプラント体周辺の骨再生システムを構築するうえで非常に大きな意義があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究結果からチタン上に良好な石灰化を誘導するためには足場となる構造だけではなく、石灰化細胞への分化を誘導するタンパク質の存在が重要であることがわかる。そのため、今後の研究では構造と石灰化細胞誘導能の両者を兼ね備えた足場素材の作成を試みたい。石灰化細胞への分化を誘導するタンパク質としては生理活性物質がいくつか報告されているが、これまでの報告を考えると生理活性物質単独での使用は処方量や使用期間など困難が予想される。そこで、上記1.の研究でテーマにした生理活性物質との結合能を有するタンパク質と共に使用することで、ある程度安定した効果が期待できるのではないかと考えている。これらのことを考慮し、in vitro、in vivo両方でチタンディスク上に安定した石灰化を誘導できる条件を検索したい。また、間葉系幹細胞から歯周組織の細胞への分化のメカニズム解明も引き続き検討していきたい。
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Research Products
(4 results)