2016 Fiscal Year Research-status Report
脱灰象牙質を用いた骨再生とその界面組織の3次元的微細構造解析
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15K20497
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
田上 隆一郎 久留米大学, 医学部, 助教 (40597457)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脱灰象牙質 / 象牙細管 / FIB/SEM / 骨再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脱灰象牙質 (demineralized dentin matrix: DDM)を用いた骨再生研究において, 次世代走査型顕微鏡を用いて, 新生骨とDDMの付着機序を組織形態学的に解析することを目的とする. H27年度はDDMをラット頭蓋骨欠損モデルにDDM移植後, 骨新生の程度をμCTにて経時的に観察し, 同部新生骨を光学顕微鏡レベルで観察した. 本年度H28年度には同試料を用いて, 新生骨と象牙質の界面をFIB/SEMトモグラフィー 法にて三次元的に再構築し, 超微形態解剖学的に観察を行った.
摘出試料をハーフカルノフスキー液にて固定し, 樹脂包埋後, 試料表面の連続的切削とSEMによるBlock face imaging(BFI)像の取得を繰り返すことで骨組織約80μm角の空間を3次元的な再構築した. なお, 取得データは画像解析ソフトのAvizoを用いてパソコン上で3次元再構築を行なった.
その結果, DDM周囲に存在する骨細胞はそれぞれの細胞突起にてネットワークを形成していた. また, 興味深いことに, その細胞突起の一部は微小な骨細管とともに象牙細管内伸展しており, 象牙細管内に骨組織が陥入していることが確認された. DDMは既に臨床応用されているが, 基礎的研究は未だ少ない. 本研究結果は, 象牙質の象牙細管という特有な構造が骨形成に関与している可能性を示唆する極めて重要な組織学的なデータである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はFIB/SEMトモグラフィー法を用いて, 新生骨とDDMの境界面を組織学的にアプローチし, 組織構築を行った. 本3年研究の実験計画の要である. 象牙細管内に一部骨組織が陥入していると思われたため, 同組織の含有元素成分をエネルギー分散型X線分光法にて精査中だが, 3μm大の象牙細管の研磨面を作製するにあたり, また同部をSEMで観察する条件設定までに多くの時間を要した. 象牙質の基質自体も石灰化しており, 象牙細管内の高電子密度領域との境界が不明瞭であったため, その組織像を確認することに苦慮した.
現在までの結果からDDM移植後の骨形成過程においては以下のように考える. ① 移植後DDMから徐放される微量なBMPを含むタンパクにより, 周囲骨組織由来の細胞や未分化細胞が誘導され, 骨細胞に分化する. ② 骨細胞の細胞突起はDDM周囲でネットワークを形成する一方で, 一部は象牙細管内に伸展する. ③ 陥入した細胞突起が細胞外マトリックスを象牙細管内で形成しながら, 象牙質基質自体も石灰化を伴う骨化が進行する.
また, 本年度は上記までのデータで学会発表を行なった. その際に受けた質問及び象牙細管の意義についてはH29年度の課題とする.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は頭蓋骨欠損部に細胞および人工材料の移植を行い, DDMとの骨形成量に差があるか検証するとともに, 今使用しているDDM移植の場合, DDM象牙細管のどこまでの範囲が石灰化および骨化を呈しているか, 現在のサンプルから統計をとる. そのためにDDMと新生骨境界面の多くのSEM標本を作製し, 観察する.
また, 過去の報告ではDDMと新生骨との間には細胞等は存在しないということであった. 本アプローチでは, 細胞質の一部が象牙細管内に陥入している細胞の存在を確認できた. 形態学的に本細胞は形質細胞と推察する. 定量化できておらず, その数は極めて少ないことから, 骨組織がDDMをコアとして形成される過程で, 偶然に取り残されたものと考えるが, 本細胞の存在意義についてはサンプル数を増やし, 検証したい.
最後に本年度は最終年度のため, 論文を投稿し, 採択されることを目指す. 本研究はFIB/SEMトモグラフィー法を用いた3次元再構築にて象牙細管内と周囲骨細胞との関係を明らかにすることを目的としている. 組織を網羅的に把握することで, より効率的な骨造成法の確立につながると考える. 特有な細胞・組織配列を構成できるような特有な象牙質の性状について遂行する. 本研究は, 今後の骨再生研究の一助になると考える.
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Causes of Carryover |
H28年度は前倒し請求し, 小動物麻酔器を購入した. ガスフィルター等の付属品を購入予定だったが, H29年度に新型が発売になるとのことで, H28年度の購入を見送ったため次年度使用額が生じた考える.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加実験において再度動物を使用するため, 麻酔器の付属品を購入する. また最終年度のため学会発表および論文作成費・投稿費にも助成金を使用する.
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Research Products
(1 results)