2015 Fiscal Year Research-status Report
分化増殖因子徐放型材料および歯髄幹細胞による顎骨再建法の開発
Project/Area Number |
15K20500
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
遊佐 和之 山形大学, 医学部, 医員 (80636960)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 顎顔面再建外科学 / 骨芽細胞 / 再生医学 / 分子生物学 / バイオマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
顎顔面領域における様々な疾患は治療後の骨欠損を伴う事が多くあり、整容的・機能的障害につながる。これらに対し自家骨移植による再建手術が行われているが、採取できる骨量、移植後の手術部位感染、骨吸収やドナーサイトへの侵襲など様々な問題を抱えている。これまで申請者は生体内微量元素の1つである亜鉛の骨芽細胞分化および骨形成促進に対する効果に着目し、研究を行ってきた。本研究では亜鉛修飾処理を行った亜鉛放出型チタンメッシュプレートおよび低侵襲で採取可能な歯髄幹細胞を用いたin vitro、in vivoでの骨芽細胞分化、骨形成を解析し、臨床応用可能な新たな顎骨再建法を構築することを目的とした。 本年度はin vitro における実験を中心として進めた。まず、テトラヒドロキシ亜鉛錯体含有水溶液中に10mm径の鏡面研磨後のチタンディスクを浸漬し亜鉛放出型チタンディスクを作製し、未処理のチタンディスクをcontrolとして実験を行った。チタンディスクの表面性状を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した所、亜鉛放出型チタンディスクはナノスケールの小孔構造を呈し、表面粗さはcontrolと比較して約0.10μmの差を認めた。また、亜鉛放出型チタンディスクをPBS中に浸漬し徐放された亜鉛イオン濃度をICP-AESを用いて測定した所、7日間において計測された亜鉛イオン濃度は3.39±1.18μMであった。また、controlおよび亜鉛放出型チタンディスク上での歯髄幹細胞の細胞生存率に有意な差は認めなかった。また、培養10日目および21日目のサンプルにおける基質石灰化をアリザリンレッド染色にて評価した所、亜鉛放出型チタンディスクでの培養において有意な基質石灰化の増強を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
亜鉛放出型チタンディスクおよびcontrol上での歯髄幹細胞培養の結果、細胞生存率に有意な差は認めず、徐放亜鉛イオンによる毒性は認められなかった。一方、培養10日目および21日目のサンプルにおける基質石灰化をアリザリンレッド染色にて評価した所、亜鉛放出型チタンディスク上での培養において有意な基質石灰化の増強を認めたことから、徐放亜鉛イオンが歯髄幹細胞の骨芽細胞分化を増強させることが示唆された。また、予備実験の段階であるが亜鉛放出型チタンディスク上での培養により骨芽細胞分化マーカーのmRNA発現の増強も確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はin vitroにおいてmRNA発現およびタンパク発現の点から骨芽細胞分化の評価を行うとともに、シグナル伝達に与える影響を考察する。また、基質石灰化の増強が確認されていることから、in vivoにおける実験へ移行していく予定である。
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