2015 Fiscal Year Research-status Report
遊走型間質細胞が形成する微小環境の機能解明と組織再生療法への応用
Project/Area Number |
15K20503
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲木 涼子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90632456)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 遊走型間質細胞 / 細胞微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小環境“ニッチ”は、間質細胞から構成され、近接する細胞の増殖や分化を調節することが知られている。特に、組織修復や組織再生といった活発な組織改変の場においては重要な因子である。本研究では、骨髄から動員される遊走型間質細胞の働きに注目し、この遊走型間質細胞が形成するニッチの組織誘導機構の解明に努めている。 In vivoの解析では、組織再生モデルとしてマウス再生軟骨モデルを使用し、組織再生における遊走型間質細胞の組織誘導機構の解明に努めた。マウス耳介軟骨細胞から採取した軟骨細胞を足場素材に投与し再生軟骨を作製し、背部皮下に移植し生体内で軟骨再生を確認した。予備実験にて、軟骨再生の各段階における間質細胞の局在を確認していたが、加えて免疫組織化学的解析を追加し、詳細な遊走型間質細胞の浸潤機構を明らかにすることができた。組織再生に伴い動員される間質細胞は、初期では周囲から動員される常在型間質細胞が主体であり、再生に伴い骨髄由来細胞に特異的な表面マーカーが陽性の間質細胞が増加することが確認された。これより再生後期に遊走型間質細胞が増加することが推測された。In vitroの解析では、軟骨細胞と間質細胞の共培養実験系を用いて、その効能を検討した。また、共培養時に軟骨再生が促進される系での培養上清を採取し、上清内に含まれるタンパク質の網羅的解析を実施し、間質細胞から放出される再生誘導因子の探索を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.マウス骨髄再構築モデルを用いた組織再生時に動員される遊走型間質細胞の同定研究 骨髄から遊走する細胞を可視化するためのマウス骨髄再構築モデルを作製予定であった。EGFP遺伝子導入マウス(C57BL/6-Tg(CAG-EGFP))から骨髄細胞を採取し、放射線3.5Gyを照射したSCIDマウスに、EGFPマウス由来の骨髄細胞を2.5×107個を尾静脈から移植し、EGFPの標識により、骨髄由来の細胞動態を可視化することを目的としていた。しかし、骨髄再構築に至らず、来年度も引き続きマウス骨髄再構築モデルの作製に努める。改善として、照射放射線量の調整をおよび抗生剤投与等の調整を行う予定である。
2.遊走型間質細胞の誘導メカニズムおよび分化誘導因子の同定 遊走型間質細胞については、白血球マーカーであるCD45、CD34、CD13陽性であり、間葉系細胞マーカーであるタイプⅠおよびⅢコラーゲン、ファイブロネクチン陽性とされている。上記タンパク質について免疫組織学的解析を進めた。結果、組織再生に伴う遊走型間質細胞の動向が確認され、再生初期ではCD34陽性、タイプⅠ陽性細胞の浸潤が再生軟骨周囲に確認され、再生に伴いCD34陽性細胞が減少することが確認された。誘導ケモカインについては、明らかな所見が得られておらず引き続き検討を進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、昨年度に作製予定であったマウス骨髄再構築モデルの作製を進捗させる。一方で、このモデルマウスの作製が困難な場合には、骨髄細胞を可視化する他の実験系の確立に努める。候補として、2光子励起顕微鏡を用いて骨髄由来細胞が可視化できるか試行し、可能であれば皮下移植した軟骨細胞周囲における骨髄由来細胞を観察する。所見を、既存の組織所見と比較することで、マウス骨髄再構築モデルで得ることを予定していた遊走型間質細胞の動向を同定することが可能であると考える。 その他は、本年度のin vitroの共培養の実験系から得た、組織再生に伴い上昇するタンパク質の解析を進める。また、本年度確立したマウス末梢血から遊走型間質細胞を分離する実験方法を用いて遊走型間質細胞を獲得し、遊走型間質細胞の解析を進める。また、軟骨細胞との共培養を始めとしたin vitroでの解析を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
昨年度に完了予定であったマウス骨髄再構築モデルの作製について。試行実験回数を、当初の予定通りに行うことができなかったため、マウスモデル作製に係る一連の費用が次年度費用として生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度費用に回った分に関しては、当初の使用予定通りマウス骨髄再構築モデルの作製費用に充てる。また、同モデルの作製に支障が生じた場合には、2光子励起顕微鏡を用いた観察を試行する予定であり、その場合には観察に必要な抗体の購入費用に充てる予定である。
|