2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔顔面領域の神経因性疼痛に対する三叉神経節グリア細胞の関与の解明
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15K20520
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河野 彰代 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10570294)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミクログリア / サテライト細胞 / オトガイ神経 / 神経因性疼痛 / Iba1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は三叉神経領域における神経因性疼痛の発現とグリア細胞の動態との関連を解明することを目的としている。片側のオトガイ神経を結紮した神経因性モデルラットを用いて術後の機械刺激に対する疼痛閾値の変化をvon Frey法によって観察した。その結果、三叉神経第3枝支配領域においては、術側、反対側ともに疼痛閾値が術後第2週にかけて低下し、術側では術後4週まで疼痛過敏状態が持続したが、反対側では術後第3週以降に回復を認めた。また、三叉神経第2枝支配領域では、術側では術後第1週から逃避閾値の低下を認め術後4週まで持続したが、反対側では疼痛閾値に有意な変化は認められなかった。 また、昨年度までに、三叉神経節におけるミクログリアのマーカーであるIba1陽性細胞の発現を免疫組織学的手法を用いて光学顕微鏡レベルでの観察を行い、逃避閾値の低下と同時期にIba1陽性細胞の形態学的変化が見られることと、術側の三叉神経第3枝支配ニューロン領域におけるIba1陽性細胞の数が有意に増加することを明らかにしていたが、今年度は電子顕微鏡レベルでの観察を行った。その結果、正常動物ではニューロンとサテライト細胞は緊密に接していたが、術後2週ではニューロンとサテライト細胞の間に空隙を認め、さらにサテライト細胞の外側に沿うようにIba1陽性細胞の突起が延長していることを明らかにした。以上より、神経損傷によって三叉神経節におけるIba1陽性細胞の数の増加と突起の延長が認められることと、ニューロンとサテライト細胞の関係が形態学的に変化することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H27年に出産のため産休・育休を取得したことにより研究が中断されたため、予定より研究の進行が1年分遅れている。 実験期間の延長を認めていただいたので今年度はこのままH28年度に予定されていた実験を遂行して行きたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果より、オトガイ神経損傷後に三叉神経節でのIba1陽性細胞の変化はこれまで報告されてきたミクログリアの特徴と一致しない部分もあることが明らかになったため、この細胞の疼痛増幅効果への関与をより詳細に検索する必要がある。また、Iba1陽性細胞と同様にニューロンを取り巻く支持細胞の1種であるサテライト細胞の形態学的変化も観察されたことから、サテライト細胞の関与についても検索が必要である。具体的には、ニューロン、Iba1陽性細胞、サテライト細胞のそれぞれにおいてATPやその受容体の発現、様々な炎症性サイトカインの関与について、免疫組織学的手法や分子生物学的手法を用いて検索する。また、臨床的には神経障害の程度によって、症状や予後が様々であることより、今後は神経挫滅モデルについても検討を行う。
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Causes of Carryover |
H27年度に出産のため、産休・育休を取得したことにより、研究が約1年分遅れているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
免疫組織学的実験に用いる抗体など効果な消耗品の購入、分子生物学的実験の消耗品購入、実験動物の購入、国際学会出席のための旅費、英文校正費など。
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