2017 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞の低酸素、酸性環境下における薬剤耐性に対する治療薬の開発
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15K20536
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
渡邉 佳一郎 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (20634554)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / 酸性環境 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性骨髄腫(MM)骨病変部では活性化した破骨細胞や酸性環境などがMM細胞に治療抵抗性を賦与する。治療成績の向上のためには骨病変部酸性環境で高い抗腫瘍効果を発揮する治療法の開発が課題として残されている。そこで今回、MM骨病変部酸環境でのRM-Aの抗腫瘍効果の機序を明らかにすることを目的として以下の検討を行い、結果を得た。【方法・結果】1.MM細胞株RPMI8226、INA6、TSPC-1に酸性環境下で抗腫瘍効果を発揮するリベロマイシンA(RM-A)1μMを添加し1日間培養すると、pH7.4では細胞死が誘導されなかったが、pH6.4ではcaspase3の活性化とともにannexinV陽性の死細胞が著明に誘導された。2.MM細胞株や患者MM細胞で高発現していた転写因子Sp1は、酸性環境下においてRM-Aで処理したMM細胞で著減するとともにその転写標的のPim-2、cMyc、IRF4の発現もタンパクレベルで抑制されていたが、これらのmRNAの発現量に変化は認められなかった。4.酸性環境において、RM-Aはcaspase8を活性化してアポトーシスを誘導するが、Sp1の発現を低下させるRM-Aの添加によって、このcaspase8の内因性阻害因子であるcFLIPの発現も低下していた。 また、RM-Aの添加により、酸性環境下においてのみcaspase9の活性化も認められた。 MM細胞に高発現しているSp1は酸性環境内のMM細胞の治療抵抗性の獲得に重要な役割を演じていると考えられるが、RM-Aは酸性環境に存在するMM細胞のSp1を標的にすることで、酸性環境で薬剤耐性を獲得した骨髄腫細胞にも効果を発揮することが示唆された。 今後、本研究で得られた結果を学術雑誌に投稿する予定である。
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