2015 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平上皮癌におけるmiRNAによる抗癌剤耐性機構の解明と個別化治療への応用
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15K20546
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
川原 健太 熊本大学, 医学部附属病院, その他 (90732735)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 抗癌剤耐性 / microRNA / OSCC / Dicer / Drosha / miR-30a |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は口腔扁平上皮癌(以下OSCC)におけるmicroRNA(以下miRNA)による抗癌剤耐性機構の解明と個別化治療を研究テーマとして研究を行ってきた。申請者はmiRNAの発現調節に関わる必須酵素のDicerの低発現は化学放射線療法への抵抗性に関与し、予後不良であるということを見出しており、今回はそのmiRNAの発現変動に注目した。申請者は以前より5-FU系抗癌剤に対する基礎研究を行ってきており、2種類の5-FU耐性OSCC細胞株とその親株のtotal RNAを抽出し、miRNAマイクロアレイ解析を行うことにより、miRNAの発現プロファイリングを調査した。解析の結果より、miRNAの発現が有意に増加したものと低下したものを確認し、共通して発現が有意に増加したものはmiR-30aの一つであり、低下したものは認めなかった。そのため解析の対象をmiR-30aに絞り、両耐性株で増加していることからmiR-30aが5-FU耐性の何らかな機序を担っている標的として考えられた。アレイの結果より実際に細胞株からtotal RNAを抽出し、RT-qPCRにてその発現を確認したところ、両耐性株において有意にmiR-30aの発現が増加していたことが確認でき、またそれぞれの耐性株に一時的に5-FU刺激を行うことで、さらにmiR-30aが上昇することを認めた。これらの結果よりmiR-30aがどのように耐性制御に関わっているか否かを評価するため、miR-30aを細胞導入し、miR-30aを安定的に高発現した細胞株を樹立し、その機能解析を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展していると考える。2種類の樹立した5-FU耐性OSCC細胞株に対してmiRNAマイクロアレイ解析を行い、共通して発現が変動しているmiRNAのmiR-30aを同定することができ、それぞれの耐性株で実際にmiR-30aの発現が上昇していること、また5-FU刺激でmiR-30aの発現がさらに上昇していることを確認しており、miR-30aが何らか耐性機構に関与している可能性が示唆された。 同様に別の研究テーマであるOSCCにおける腫瘍低酸素環境下でのmiRNAの発現制御機構の解明についてだが、低酸素環境が癌細胞の悪性形質に大きな影響を与えている事が示されており、申請者が行った予備実験データではOSCC生検標本を用いて行った免疫組織化学的染色において、低酸素で誘導される代表的転写因子であるHIF-1αと以前論文発表したDicerの発現が逆相関関係にあるという事実を認めている。これらよりmiRNA合成酵素が低酸素環境下で何らかの発現制御を受けている可能性を示している一方で、miRNAが直接HIF-1αによる転写制御を受けている可能性も示唆している。 最後に癌患者体液中バイオマーカーとしてのmiRNAの有用性の検討だが、術前化学放射線療法の治療前後および手術後の唾液や血液のサンプルを回収しているため、今後はそれらサンプルからもmiRNAを抽出し、新たな癌の指標となる産物に焦点をあてて検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
miR-30aを強制的に発現させた高発現株を樹立し、実際にmiR-30a高発現株がどのような細胞挙動を示すのか、また5-FU感受性試験で耐性度を獲得しているのかどうかを検討していく。さらにmiR-30aがターゲットとする標的遺伝子も検索予定である。 また低酸素環境下で発現が上昇、低下するmiRNAを検索し、同様に高発現株の樹立、低酸素環境下での細胞動態を観察する。 最後に癌患者の唾液および血液サンプルは回収済みのため、今後は抽出したmiRNAと術前化学放射線療法の治療効果の関係を検討していく。
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Causes of Carryover |
組織や培養細部での遺伝子・タンパク質発現解析、total RNA抽出からmicroRNAマイクロアレイ解析、実施に関連する経費、ベクター購入費用を含んだ細胞培養器具・試薬、遺伝子導入試薬、各種特異的抗体等を計上したが、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の機能解析の継続として特定分子の詳細な機能解析が想定される。また抗癌剤耐性に加え今後は放射線耐性株使用による放射線の耐性機構の解明も行っていくため、それら解析に必要な細胞培養器具・試薬、遺伝子導入試薬、抗体等を計上する。また前年度同様、国内学会で頭頸部癌学会での発表、日本癌学会参加を予定しているため旅費も計上する予定である。
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Research Products
(3 results)