2015 Fiscal Year Research-status Report
頸部リンパ節転移に対する既存抗癌剤の磁性化薬を用いた新規治療法の開発
Project/Area Number |
15K20552
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
佐藤 格 横浜市立大学, 医学部, 助教 (00737710)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 抗癌剤 / 温熱療法 / ドラッグデリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
局所の超進行癌、再発症例、頸部の多発性リンパ節転移などは超選択的動注化学放射線療法だけでは制御困難な症例もあることから、このような症例に対しては温熱療法の併用を行っている。今回の研究では、われわれはマウス舌癌頸部リンパ節転移モデルを作成し、申請者らのグループが開発した磁性パクリタキセルを用いて、頸部のリンパ節転移に対する抗腫瘍効果の検討を目的とする。本研究では、磁性パクリタキセルを利用することにより、頸部転移リンパ節を対象として、パクリタキセルが持つ抗癌活性と温熱療法の両者の効果による相乗的作用とCT造影効果を細胞実験、動物実験において検討し、その効果を実証する。頸部リンパ節への転移モデルとして、ヒト由来扁平上皮癌細胞を用いて従来の抗癌活性と温熱療法によるアポトーシス誘導を解明し、磁性パクリタキセルの細胞傷害性を証明した。われわれが開発した磁性パクリタキセルが、乳がん細胞に対して抗腫瘍効果があることは証明されている。アポトーシスによる細胞死が、パクリタキセルの従来持つ抗癌活性と温熱療法の相乗効果による抗腫瘍効果がどの程度増強されるかは不明である。平成27年度は、細胞実験において抗腫瘍効果のメカニズムを確認するとともに、動物実験をはじめる上で必要な条件検討を行った。また、実際のリンパ節への磁性パクリタキセルの集積量をCTの造影効果から検討するため、ファントムモデルを用いてプレ実験を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、頸部リンパ節への転移モデルとして、ヒト由来扁平上皮癌細胞を用いて従来の抗癌活性と温熱療法によるアポトーシス誘導を解明し、磁性パクリタキセルの細胞傷害性を証明した。腫瘍細胞はヒト由来扁平上皮癌細胞(OSC-19、HSC-3)を用いた。OSC-19、HSC-3(5×105cells)に本抗癌剤7.5、15、30、60μMを投与した。温熱は交流磁場にて行った。アポトーシスは、FACSCantoⅡフローサイトメトリーで測定した。ヒト由来扁平上皮癌細胞に対して濃度依存的にアポトーシスの誘導を認めていた。次に、本抗癌剤が浸潤能の高いOSC-19、HSC-3癌細胞に対して細胞の動きを抑制することを解明し、リンパ節転移の細胞に対しても有効であることを証明するため、ヒト由来扁平上皮癌細胞株に対して磁性パクリタキセルが及ぼす浸潤能抑制を評価した。OSC-19、HSC-3癌細胞をチャンバースライドに撒き24時間後に7.5μMの本抗癌剤を投与した。顕微鏡で細胞の動きを30分おきに24時間撮影し、細胞が動きをプロットし距離を求めた。本抗癌剤を投与した群では、細胞の活動性が抑制されていた。最後に、アポトーシスによる細胞死が、パクリタキセルの従来持つ抗癌活性と温熱療法の相乗効果による抗腫瘍効果がどの程度増強されるかは不明であったため、動物実験を用いて最適な投与方法などプロトコールの確立を目指した。このことから、最適な投与濃度と投与量を決定した。また、実際のリンパ節への磁性パクリタキセルの集積量をCTの造影効果から検討するため、ファントムモデルを用いて評価を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、マウスリンパ節転移モデルを用いた新規磁性抗癌剤の抗腫瘍効果の検討を行う予定である。頸部リンパ節への転移における本薬剤の抗癌活性・温熱療法による抗腫瘍効果とCT造影効果を、マウスを利用した動物実験において証明する。実験方法としては、マウスの頸部リンパ節転移モデルの確立を行う。マウスの舌にHSC-19癌細胞(細胞数:5.0×108個)を移植する。マウスのHSC-19癌細胞については移植後約20日後に頸部リンパ節への転移が起こることが報告されている(Sano D. et al. Head Neck Oncol. 2009)ため、HSC-19癌細胞を舌に移植し、移植後16日、18日後、20日後、22日後にリンパ節を摘出し、転移の有無、原発と転移リンパ節の大きさ、個数について病理組織学的に評価する。次に、交流磁場発生装置を用いたマウスリンパ節転移モデルによる温熱療法の検討を行う。マウスの舌にHSC-19癌細胞を移植し、腫瘍径5mmを超えリンパ節転移が確認されたら実験開始とする。イソフルランを用いた吸入麻酔下に、腫瘍部位に局所に本抗癌剤(5mg/kg)を投与する。コントロール群は投与なし。投与後、頸部をコイル径100mmの内部へ挿入し、磁場印加を行う。週2回、3週間行い定期的にCT撮影を行う。舌・リンパ節の組織標本を作成し、HE染色、TUNEL法、免疫組織染色で評価を行う。温熱を行うためのマウスの頸部が入る交流磁場機器については申請者らのグループが開発した装置を使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)