2015 Fiscal Year Research-status Report
口腔顎顔面領域における感覚障害の再現性の高い客観的診断法の開発
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15K20568
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
阿部 佳子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (30401334)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 体性感覚誘発電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの三叉神経支配領域を刺激して得られる体性感覚誘発電位(SEP)の成分には、潜時10~150msecの前期成分と潜時150~250msecの後期成分に大別される。潜時10~150msecの前期成分は、短潜時体性感覚誘発電位(short somatosensory evoked potential:SSEP)と呼ばれ、三叉神経領域の痛みを中枢に伝える神経系の一次中継核(三叉神経脊髄路核)から大脳皮質に至る過程に由来すると考えられているが、電位が微小であることや、痛みの強さと電位が相関しないことなどから、その臨床意義は未だ不明である。本研究では、このSSEPを詳細に解析してその臨床的意義を明らかとし、三叉神経支配領域のSEPを利用した感覚障害・神経疾患の客観的かつ定量的に評価する臨床検査法の確立を目指している。 既存のものは1990年代に特注にてされたものであるが、故障につき再現できなかったため、このSEPの記録装置および刺激発生装置(電気)を新製するところから研究を開始した。PowerLab 4/35 PL3504 ・バイポーラリニアアイソレータBSI-950 ・デュアルバイオアンプFE135 ・脳波用皿電極 NE-113A・PowerLab用記録・解析・制御PCを購入して、脳波記録装置と刺激発生装置を今回再構築した。 現在は、この新装置を使用し、健常者でのオトガイ皮膚に電気刺激(痛み)を行い、得られたSEPおよびSSEPを解析している。研究計画では、CO2レーザー刺激による記録であったが、後の臨床応用を考慮し、だれでも簡単に刺激を再現できるように、まず電気刺激による刺激を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既存の脳波測定機器(Neuro-pack-four mini, MEB-5304 Nihon Kohden, Japan)・電気刺激発生装置(SEN-3301; Nihon Kohden, Japan)・アイソレーター(SEN-1421; Nihon Kohden, Japan).・体性感覚誘発電位加算ソフト(MISASA製)システム一式が故障したため、修繕を要請するも機器が特注かつ古いため、設計図が日本光電に存在せず、新システムの立ち上げから研究を開始することになった。電気刺激発生装置およびアイソレーターは1988年頃より使用、脳波測定機器と誘発電位加算ソフトは2002年頃より使用している。 また、研究に使用する刺激として、CO2レーザー(Lasery 15Z, Nippon Infrared Industries Co. Ltd, Kawasaki, Japan)を予定していたが、2002年頃より使用し、この機器も保証期間がすぎており、対象がヒトであること、また今後臨床応用が可能になった際に、誰でも簡単に取り扱いが可能な電気刺激を新たに採用することとした。これにより、電気刺激発生装置およびアイソレーターも新製した。PowerLab 4/35 PL3504 ・バイポーラリニアアイソレータBSI-950 ・デュアルバイオアンプFE135 ・脳波用皿電極 NE-113A・PowerLab用記録・解析・制御PCを購入し、システムを再構築した。 現在は、この装置の動作確認を行っており、実際に被験者(患者)に施行するまでに時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の計画である、疼痛刺激によるSEPの記録を現在も実行中である。加えて、今年度は、疼痛・圧感覚・温度感覚を刺激しない、触刺激のみを発生できる装置を開発する予定である。触刺激のみの発生で、Aβ線維を純粋に刺激できると考えられ、圧縮空気による刺激を考案中である。刺激発生装置は、バイオリサーチセンターに委託予定であり、この装置は27年度に新製したSEPの記録装置に簡単に連動させることが可能である。 本研究の特色・独創的な点は、得られたSEPを三叉神経のAδ線維、C線維, Aβ線維についてそれぞれ個別に詳細に解析することによって、その臨床的な意義を解明することにある。Aδ・C・Aβ線維のどの線維に由来したSEPかを分析するために、伝導速度と(刺激部位―三叉神経脊髄路核)間の距離から算出し、特定する。刺激部位―三叉神経脊髄路核間の距離は、被験者の頭頸部セファログラム側面像および実測値を参考に算出する。三叉神経脊髄路核は、橋-延髄、あるいは橋の下部から第3頚髄にかけて下方に長く伸びているため、被験者の頭頸部セファログラム側面像第3頚椎を指標とする。 これまで、智歯抜歯後、インプラント埋入後、下顎枝矢状分割術後などに生じる下歯槽神経麻痺やオトガイ神経麻痺などの神経麻痺や、神経障害性疼痛の評価は、患者の申告に基づく主観的検査法に頼ることなく、三叉神経領域の神経麻痺や神経障害性疼痛の再現性の高い客観的かつ定量的評価法を確立し、臨床応用を目標にする。
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