2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌発生に関わる腫瘍免疫学的解明と早期診断法の確立
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15K20570
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
熊谷 賢一 鶴見大学, 歯学部, 助教 (10518129)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 口腔がん / 網羅的 T 細胞受容体 / サイトケラチン / TCR / 前癌病変 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 口腔粘膜疾患の発癌過程における獲得免疫機構の挙動を解析することで, 口腔がんの早期発見・予後予測に関する新規診断法の確立を目指す. その研究手法として, 異型上皮内の腫瘍性上皮を上皮関連遺伝子発現解析から探索し, またそれに相応して発生するTリンパ球による免疫応答を網羅的 T 細胞受容体(TCR)解析を用いて行うことで, 初期がん発生時の腫瘍抗原特異的免疫応答の有無を検索することを研究目標としている. 平成28年度は前年度から継続して口腔がんおよび口腔粘膜疾患患者の検体組織を用いて,病理・免疫組織学的解析を実施した.腫瘍性異型上皮に関する病理・免疫組織学的解析と浸潤リンパ球に対する免疫組織学的解析を行った.TCR解析については、RNA 安定化試薬に保存した組織から RNA を抽出しTCR レパトア解析に用いた.具体的には,RNA から cDNA を合成した後, Adaptor 付加 cDNA を適当な形にし,Adaptor および TCR 定常領域にそれぞれ相補的なオリゴ DNA プライマーセットとして用いてnestedPCR を行い, 全ての TCR をコードする遺伝子を同一条件下で特異的に増幅する.得られた PCR 産物を全てのTCRVファミリーにそれぞれ相補的なオリゴDNAを固層化したマイクロプレートに播種してハイブリダイゼーションを行った後, 酵素反応を用いて発色させ吸光度を測定する.得られた吸光度から各 TCRV ファミリーの相対存在率を算出(TCR レパトア解析)し,T細胞のレパトアを比較検討することで TCR 遺伝子発現ライブラリの構築を図った. その結果, 腫瘍浸潤リンパ球はおもにCD8陽性細胞であり,腫瘍周囲には特定のTCR遺伝子を有するT細胞が存在しており, 腫瘍抗原特異的免疫応答を担当していると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,口腔がんおよび口腔粘膜疾患患者の検体組織を用いて, 病理・免疫組織学的解析およびTCR解析を実施した.腫瘍性異型上皮に関する病理・免疫組織学的解析と浸潤リンパ球に対する免疫組織学的解析を行っており,腫瘍抗原特異的免疫応答が明らかとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的 TCR 解析による免疫学的解析を継続して行い, 腫瘍免疫学的な見地から初期癌としての病態評価ならびに臨床免疫応答の有無について解析を行っていく. 口腔がん発症に関わる TCR 遺伝子情報は, 腫瘍性異型上皮に対する腫瘍抗原特異的免疫応答の見地からの口腔がん発生の早期検出を可能とし, さらに予後予測を行うという新たなテーラーメード型遺伝子診断法の礎となることを目的として進めていく.
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Causes of Carryover |
症例数の不足により,解析に関わる消耗品および研究試薬の使用量が想定していた量よりも少なかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
TCR解析用の研究試薬の購入を予定している.
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