2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K20571
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
落合 隆永 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (20410417)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 臨床腫瘍学 / 分子病理学 / 形質発現 / 顎骨部病変 |
Outline of Annual Research Achievements |
顎骨部に発生する病変の様々な形質変化に関わる分子調節機構の解明を本研究では行っている。顎骨に生じる歯原性腫瘍の代表的な疾患にエナメル上皮腫があり、エナメル上皮腫を構成する細胞は歯胚のエナメル器に類似する組織で構成されるが、腫瘍細胞が扁平上皮への化生や顆粒細胞の出現等の様々な形質変化や形態変化が生じることが知られている。平成28年度は歯原性腫瘍での形質変化について、エナメル上皮腫の扁平上皮化生と扁平上皮化生部位での角化機構に着目し周辺帯形成因子について検討した。 エナメル上皮腫の扁平上皮化生部位での角化関連因子である周辺帯関連タンパク質のinvolucrin(IVL)、transglutaminase(TGM)ファミリーのTGM1、TGM3およびsmall prolin rich protein(SPR)ファミリーのSPR1a、SPR1b、SPR2、SPR3の組織内分布を検索した。 IVLは扁平上皮化生部位の有棘細胞様細胞と角化細胞に陽性を示した。TGM1は有棘細胞様細胞に陽性を認めた。TGM3の発現は観察されなかった。SPR1bとSPR2およびSPR3は有棘細胞様細胞に局在した。 重層扁平上皮ではIVLやLORおよびSPRをTGMが架橋することで周辺帯が形成され角化層の形成が行われる。エナメル上皮腫における角化機序はIVLとSPR1bとSPR2およびSPR3をTGM1が架橋するが、TGM3の関与は認められなかった。エナメル上皮腫ではIVLとSPRsをTGM1が架橋することが明らかとなったが、TGM3が関与しないことはエナメル上皮腫の扁平上皮化生部位での角化機序が口腔粘膜や皮膚の角化機序と異なる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
顎骨部に発生する病変は様々な分化や形質発現を示す。本研究はこれら顎骨部病変の腫瘍性・増殖性病変の形質変化に関わる分子調節機構の解明を目的とする。歯原性上皮組織はしばしば重層扁平上皮化生を生じ一部で角化層の形成を認める。歯原性上皮は本来非角化上皮組織で構成されるが、歯原性腫瘍や歯原性嚢胞の一部では角化現象が生じる。上皮組織の角化には周辺帯形成が重要であることが知られているが、歯原性上皮での報告は少ない。昨年度は歯原性角化嚢胞や石灰化歯原性嚢胞の角化機構を検討した。本年度は腫瘍性疾患であるエナメル上皮腫の扁平上皮化生部位での角化機序を検討した。歯原性上皮組織に由来する疾患での角化現象を調節する機構の一部を明らかとしたので、概ね研究は順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
顎骨部に生じる病変の形質変化である扁平上皮化生と化生部位での角化機序の一部を平成28年度までに解明するの到ったが、歯原性上皮組織が扁平上皮に化生する機構に関しては不明な点が多く残されている。また、疾患の違いにより周辺帯関連因子の発現に違いがみられた。今年度はこれらの化生性変化を誘導する因子と周辺帯関連因子の調節機構を分子生物学的手法にて詳細に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定の物品価格を定価で見積もったため、実際の納入価格との間に差額が生じた。研究自体が当初の見込みよりもスムーズに進み、試薬や消耗品の使用量を少なく抑えることができ、結果として繰越が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度額と合算することで、研究の遂行に必要な物品購入を行う予定である。
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