2015 Fiscal Year Research-status Report
歯牙移動時におけるTRPチャネルを介した新規疼痛メカニズムの解明
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15K20589
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中村 政裕 岡山大学, 大学病院, 助教 (20708036)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | TRPチャネル / 歯牙移動 / 疼痛メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に実施した研究成果として、歯根膜周囲組織に存在するTransient Receptor Potential(TRP)チャネルの特定を行い、実験的歯牙移動モデルマウスを確立した。歯根膜周囲組織に有意に存在しているTRPチャネルを特定するために、歯根膜組織中のmRNAを回収しマイクロアレイにて解析を行った。対照群としては同歯の歯髄組織を選択した。その結果、歯根膜組織中には、歯髄組織中と比較し、有意にTRPV2,TRPC1,C6の発現量が増加していることが明らかとなった。また、In vivoにてTRPチャネルを介した痛み刺激の伝達経路を確認するために、実験的歯牙移動モデルの作成が必要であった。そのため、8週齢のICRマウスを用い第一大臼歯および第二大臼歯間に弾性エラスティックを挿入することで、前後方向への歯牙移動を図る歯牙移動モデルを確立した。また、機械的刺激に対する痛み伝達を確認するため、同モデルマウスを用い延髄の薄切切片を作成し、免疫染色を行った。その結果、われわれの実験的歯牙移動モデルによって優位に延髄三叉神経脊髄路核での疼痛マーカーが増加していることが明らかとなった。 今後は、機械的刺激に対しすでに他臓器においてその受容体としての役割が報告されているTRPV2チャネルに着目し、TRPV2チャネルのアゴニストおよびアンタゴニストを併用し痛み伝達経路の解明を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、歯牙移動時におけるTRPチャネルを介した新規疼痛メカニズムの解明である。この目的を達成するために、平成27年度の研究計画では、「1.ヒト歯根膜組織に発現するTRPチャネルの網羅的解析」を行い、「2. マウスを用いた実験的歯の移動モデルでのTRPチャネルの時間的・部位的分布確認」を行った後、平成28年度には「3. 同定したTRPチャネル阻害剤による歯の移動に伴う痛み抑制効果解析」を行う予定にしていた。このうち、1についてはヒト歯根膜組織に有意に発現しているTRPチャネルを同定することができたため、順調に進展している。また、2についてはマウスを用いた実験的歯牙移動モデルを作成することが出来ているが、時間的・部位的分布は現在解析中である。以上のことから、平成27年度までの研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究の推進方策としては、平成27年度に行っていた「2. マウスを用いた実験的歯の移動モデルでのTRPチャネルの時間的・部位的分布確認」を引き続き行っていく。同時に実験的歯牙移動モデルマウスに対しTRPV2チャネルアンタゴニストおよびアゴニストを用い、疼痛マーカーの増減を確認することで疼痛経路を確認し、「3. 同定したTRPチャネル阻害剤による歯の移動に伴う痛み抑制効果解析」を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画通り、平成28年度に行う実験動物や試薬、消耗品の購入に加え、本研究によって得られた知見を発表するための旅費・論文閲覧および英文校正・論文投稿費用を予定しているため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今回発生した次年度使用額については、実験的歯牙移動モデルマウスの購入、試薬、消耗品の購入に使用する予定である。また、研究最終年度であり、研究成果発表を行う必要があるため、旅費・論文閲覧および英文校正・論文投稿費用として使用する予定である。
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