2016 Fiscal Year Research-status Report
蛋白同化ステロイドによる咀嚼筋の早期賦活化が顎口腔機能及び顎顔面形態に与える効果
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15K20599
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中村 文 長崎大学, 病院(歯学系), 医員 (50711959)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 咀嚼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、咀嚼機能低下モデルマウスを使用し、咀嚼機能獲得期に持続性蛋白同化ステロイドを投与することで筋機能を賦活化させ、顎口腔機能の発達、および、顎顔面形態の成長への効果を評価する。これにより、先天的な機能低下保因者に対して、成長発達誘導療法を開発するための基礎的データの構築について探究することを目指している。 本年度は、咀嚼機能低下モデルマウスとして、A型ボツリヌス毒素製剤(ボトックスビスタ注用50単位、アラガン・ジャパン株式会社)を咬筋もしくは側頭筋に0.01mlあたり0.1Uとなるように生理食塩水で希釈し、両側咬筋もしくは両側側頭筋に0.01ml注入したモデルマウスを作製した。このモデルマウスを実験対象として、磁気センサーを応用した小動物3次元顎運動測定システムにて、自由行動下における、マウスの機能時の顎運動および咀嚼筋(咬筋・側頭筋)筋電図の同時記録を行った。 その結果、咀嚼機能低下モデルでは、注入後に筋活動量および活動時間の著名な低下が認められた。また、顎運動では、注入後に、実際マウスで食物の粉砕臼磨が行われる咬合相において、咀嚼経路が大きくばらつく結果となった。これより、筋紡錘をはじめとした求心性入力が影響を受け、顎運動が不安定となったことが推察された。さらに、顎運動パターンが変化し、効率的な粉砕臼磨運動が困難となり、咀嚼効率が減少した。 これらの結果から、ボツリヌス毒素誘発性の機能低下モデルでは、咬筋および側頭筋の協調運動が変化し、咬筋と側頭筋のパワーバランスの変化によってマウスの顎運動パターンが変化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
咀嚼機能低下モデルとして、当初の予定ではDuchenne型筋ジストロフィーモデルマウスであるdystrophin欠損マウス(mdxマウス)を検討していたが、本病態モデルでは十分な筋機能低下が得られなかった。このため、計画を変更して、A型ボツリヌス毒素製剤を使用したボツリヌス毒素誘発性の機能低下モデルを実験対象として機能発達や形態成長の検証を行っている。本年度は、モデルマウスの顎機能の特徴を解析する作業に時間を要したため、進捗状況は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ボツリヌス毒素誘発性の機能低下モデルを用いて、離乳直後のCPG形成期前に、筋肉中の速筋線維を肥厚させ筋肉増強作用を有する蛋白同化ステロイドを投与することで、低下した状態にある筋機能を賦活化し、成長とともに、顎口腔機能、および、顎顔面形態にどのような効果をもたらすか評価する予定である。
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Causes of Carryover |
咀嚼機能低下モデルとして、当初の予定ではDuchenne型筋ジストロフィーモデルマウスであるdystrophin欠損マウス(mdxマウス)を検討していたが、本病態モデルでは十分な筋機能低下が得られなかった。このため、計画を変更して、A型ボツリヌス毒素製剤を使用したボツリヌス毒素誘発性の機能低下モデルを実験対象として機能発達や形態成長の検証を行っている。本年度は、モデルマウスの顎機能の特徴を解析する作業に時間を要し、進捗状況に遅れが生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品として、運動計測機器を作製・改良するための電子部品、機械部品、工具等が必要になる。また、50匹前後のマウスを用いる予定であるため、それに伴って飼育経費や手術時に使用する薬品等が必要となる。 さらに、研究報告のための旅費や、研究成果発表にかかる印刷費等が必要となる。
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