2015 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原細菌感染に対するビタミンDによる新規の予防・治療効果の検討
Project/Area Number |
15K20619
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
野中 由香莉 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (40710520)
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Project Period (FY) |
2015-03-01 – 2018-03-31
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Keywords | ビタミンD / 歯周病 / 抗炎症作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビタミンDは、脂溶性ビタミンでありカルシウムホメオスタシスを制御することで骨代謝に重要な役割を果たすことが広く知られている。近年、ビタミンDの新たな機能として、単核白血球やマクロファージにおいてはToll like receptor(TLR)を介した病原性因子による刺激によりVDRの発現が上昇し、それにより抗菌ペプチドであるCathelicidinが誘導され抗菌作用を示すことが報告されている。ヒトやマウスを対象にした研究においても、血中のビタミンDレベルの低下がMycobatium tuberculosis, Salmonellaなどの細菌やウイルスの罹患につながることなどが報告され、ビタミンDの抗菌的な作用が感染症の分野でも注目されている。 歯周炎は歯周病原細菌による感染症であるが、その影響は口腔内局所のみにとどまらず、動脈硬化性疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患、リウマチ等の重篤な全身疾患のリスクファクターであることが多くの疫学調査及び動物実験によって明らかにされている。上記のように近年明らかになってきたビタミンDの抗菌的作用から、歯周炎によって引き起こされる全身の免疫系や代謝系の恒常性破綻に対してもビタミンDが抑制的に働くことが期待される。本研究では歯周病原細菌感染に対するビタミンDの抗炎症、抗菌的作用を明らかとすることを目的とする。 H27年度は、歯周病原細菌感染に対するビタミンDの抗炎症作用について検討を行った。マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞に対し、P.gingivalis LPSを用いて刺激を行い、活性型ビタミンD 1,25(OH)2D3添加による抗炎症作用を検証した。炎症性サイトカインTNF-αの遺伝子をReal-time PCR法、及びタンパク発現についてはELISA法を用いて解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
出産・育児による研究中断のため、平成27年度は実験の遂行期間が、平成27年10月からの半年間に短縮されたことが大きな理由として挙げられる。しかしながら、期間に合わせて当初の年次計画を見直し、細胞を用いたin vitroの実験系を先立って行うという、新しい研究計画を立案、実行することで、一定の結果を得ることが可能となった。 また、活性型ビタミンD薬剤の抗炎症効果が、当初期待していた程には得られなかったことから、至適濃度やタイムコースを含めた適切な実験系の検討に繰り返し実験が必要となったことも、研究の進捗を遅れさせた原因となったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き上記のマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞を用いた実験系において、ビタミンDのレセプターであるVDRの発現量の変化の解析に加え、VDR target geneであるCathelicidinなどの遺伝子発現の検討を進めていきたいと考えている。 また、ヒト単球由来THP-1細胞などの他の種類の細胞についても同様の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
出産・育児による研究中断のため、平成27年度は実験の遂行期間が、平成27年10月からの半年間に短縮されたことが大きな理由として挙げられる。また、それにあわせて研究計画を見直し変更したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額として翌年度に繰り越した予算については、主に細胞培養関連試薬等の消耗品の購入に使用予定である。
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