2015 Fiscal Year Research-status Report
カベオリン-1を標的とした結合組織における炎症の抑制制御
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15K20622
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
冨川 知子 (山口知子) 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90580267)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歯周炎症 / IL-6 / カテプシン / カベオリン-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト歯肉線維芽細胞において,通常細胞内に存在するカテプシンが恒常的に細胞外へ分泌されており,IL-6によって細胞外へのカテプシン分泌を亢進させることが明らかとなった。さらに,細胞外へ分泌されたカテプシンBおよびLはウエスタンブロット法にて前駆体として検出されたが,前駆体の状態でもpH5.5の条件下で活性を有することが明らかとなった。炎症巣部では酸性環境下になることが報告されており,歯周炎の病変部位の環境も酸性である。このことから分泌されたカテプシンBおよびLは実際の歯周炎の病変部位においても活性を有していると考えられる。以上のことは,悪性腫瘍細胞から分泌される前駆体カテプシンBが活性を示して細胞外基質を分解することと一致する。さらに,慢性関節リウマチ患者から採取した滑膜液中のカテプシンBおよびLはⅠ型コラーゲンを分解するという報告もあるため,歯周炎においても分泌された前駆体コラーゲン等の細胞外基質の破壊に関与していると考えられる。 ヒト歯肉線維芽細胞内のIL-6刺激によるカテプシンBおよびLの産生亢進において,膜タンパクの一つであるカベオリン-1が必要であることを報告したが,本研究においても,siRNAを用いてヒト歯肉線維芽細胞におけるカベオリン-1の発現を抑制したところ,IL-6刺激時のカテプシンBおよびLが有意に減少した。またカテプシンBの分泌においては,IL-6刺激がない場合においてさえも有意に減少した。以上の結果から,カベオリン-1がIL-6のシグナル伝達経路に関与している一方で,カテプシンBの分泌においては細胞膜から細胞外への分泌にカベオリン-1が関与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において平成27年度に予定していた培養実験は概ね終了することができたことから,本研究は概ね順調に推進していると考える。また,来年度以降に実施する臨床的研究においても該当する倫理委員会において承認手続きを完了しており,来年度からも引き続き研究を推進できる環境にあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,臨床サンプルの解析を開始する。岡山大学の倫理委員会にて承認された方法によって歯周病患者の血清サンプル中のカテプシンおよびIL-6の量を対照者のものと比較検討する。それによって,歯周病の炎症状態とカテプシンの分泌量の相関関係を検討する。また,カベオリン-1が炎症抑制分子として働く以外に,炎症の程度を示す炎症マーカーとしての有用性も検討する。具体的には以下の方法によって行う。 1.歯周病患者における歯肉および血清中のカベオリン-1の局在と発現量の検討 歯肉組織中のカベオリン-1の局在は,免疫染色法により検討する。また,血清週のカベオリン-1の発現量はウエスタンブロット法を用いて測定する。カベオリン-1は炎症抑制分子として働く以外に,歯周病重症度を示す歯周病マーカーとしての有用性も検討する。 2.歯周病患者における歯肉および血清中のカテプシン活性状態の検討 カテプシン活性は,これまでの手法に従って測定する。対照として採取した健常者の歯肉,血清中のカテプシンB,L,およびIL-6の量を比較検討することによって,歯周病の状態とカテプシンの分泌量の相関関係を検討する。
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