2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K20634
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
土谷 忍 東北大学, 大学病院, 助教 (90547267)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 咀嚼 / 筋 / 肝臓 / IL-6 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、Network Medicineの概念から糖尿病に代表される代謝性疾患の治療法が更に包括的なものとなっている。咀嚼機能の低下と糖尿病や肥満などの代謝性疾患との関連は示唆されているが、咀嚼機能と代謝性疾患を繋ぐ明らかなエビデンスは認められない。本研究では、咀嚼機能の低下により生じる軟食傾向といった食習慣の質的低下が、肝臓を中心とした糖代謝機構の恒常性を障害することを示し、咀嚼が肝臓を刺激するメカニズムについて明らかとする。 実験系としてはマウスを粉末食にて4ヶ月余り飼育し、インスリンを中心とした血糖値の調節機構の変化について、ELISAやHPLCにより検討を行った。採取した血液について、粉末食群の平常時のインスリン濃度の低下と糖負荷後の急激な上昇が認められ、平常時血糖値の有意な上昇が認められた。加えて、行動についても粉末食群とコントロール群の間に違いが認められた。上記の結果に加えて、筋組織におけるIL-6発現について検討を行い、軟食化傾向な食生活が咀嚼活動によるIL-6産生を低下させ、肝臓の糖代謝機構の恒常性を破綻させることで代謝性疾患の発症基盤となることを示した。 soft foodやfast foodといった食生活の崩壊と肥満や生活習慣病との関連が示され、『食生活の悪化』は深刻な社会問題となっている。しかしながら、食生活の悪化が咀嚼機能の低下に起因するものであっても、治療の選択肢に歯科治療が求められるケースは少ない。その理由として、咀嚼機能の低下が代謝性疾患の危険因子との認識が低いことが挙げられる。我々は咀嚼運動により産生されたIL-6が肝臓に直接作用する可能性を報告し、糖尿病のNetwork Medicineに歯科が参画することを推進し、代謝性疾患の診断、治療、予防に歯科が主体となる咀嚼機能の維持、回復の意義について明らかとすることを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の仮説を立証するうえで、非常に有用な結果が出たものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
粉末飼育による糖代謝調節機構の破綻については、平常血糖値の上昇とインスリン、アドレナリン、コルチコステロンの血清濃度の変化から、粉末食飼育に伴う高血糖傾向が示された。これらは食餌の消化・吸収性と関連することが予想される。すなわち、粉末食飼育では食餌前後の血糖値の変動が大きく、それらが糖代謝機構への慢性的な負荷となり、結果として糖代謝に関連するホメオスタシスの変調が来たされたものと推察される。 粉末食飼育によって誘導される中枢系の変化(ドーパミンやセロトニン神経系の代謝動態)と内分泌系への影響についても検討を行い、糖代謝調節機構の破綻に関してメカニズムの解明を行った。また副腎の形態学的検討から、束状帯の肥厚が示され、これらの結果は血清コルチコステロンレベルの上昇の発現の比較から、IL-1βが本研究の仮説における主要な因子であることが予想される。 これらの結果を,学会および専門の学術雑誌などにおいて広く発表をおこなう。
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Causes of Carryover |
本研究により食習慣の質的低下が咀嚼を介して成長期における肝臓を中心とした糖代謝機能の発達を障害することが明らかとなった。これらの結果を,学会および専門の学術雑誌などにおいて広く発表するため。
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