2015 Fiscal Year Research-status Report
内服抗がん剤の経管投与時の曝露に配慮した安全な取り扱い方法に関する研究
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15K20716
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
青木 学一 北里大学, 薬学部, 助教 (80458760)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経管投与 / 簡易懸濁法 / 経口抗がん剤 / 環境曝露 / 職業曝露 / 懸濁液のpH / 配合変化 / 清掃処理法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、経口抗がん剤を経管投与する際の環境曝露の調査方法を確立し曝露に配慮した取り扱いに関する情報および、安全な経管投与を実施する上で重要な情報を収集することを目的として研究を推進し、以下の成果を得た。 1)医療用の経管栄養シュミレーター人形を改良して、繰り返し経口抗がん剤あるいはダミー薬剤を経管投与しても周辺環境に飛散や曝露を引き起こさないモデル人形を開発した。これにより安全な曝露対策に関する繰り返し実験が可能となることから、その意義は大きい。今後は視覚的に曝露状況を観察可能な実験系の確立をめざし検討を重ねる。 2)エンドキサン錠(シクロホスファミド)の粉砕や分割調剤に使用しているパッカー型分包機への飛散状況を拭き取り法により調査し、分包機全体および特定の箇所に多量に飛散していることを見出した。 3)懸濁液のpHに起因する配合変化に着目し、先発医薬品と後発医薬品の内服薬の懸濁液のpHを測定し、液性をリスト化した。同一成分薬であっても先発医薬品と後発医薬品とで液性が異なることが明らかとなり、pH依存性配合変化を予測する上で有用な情報が得られた。 4)経管投与患者に頻繁に投与される薬剤であり、懸濁液が酸性を示すクロピドグレル硫酸塩錠と塩基性を示す酸化マグネシウム錠を同時懸濁した後のクロピドグレル硫酸塩量のHPLC法による定量法を確立した。また、含量および外観変化、チューブ通過後の注入器の状態から配合変化により投与困難となることが示唆された。したがって、クロピドグレル硫酸塩錠と酸化マグネシウム錠は別々に懸濁して経管投与する必要性があることを発見した。 5)本研究に関連した論文「ロイケリン散10%の環境曝露に配慮した清掃処理法-調剤現場での実施例-」が日本病院薬剤師会雑誌第52巻第3号に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在の研究の進捗状況としては、やや遅れている状況である。その理由としては、医療用の経管栄養シュミレーター人形を改造し、経管投与後に繰り返し実験できるよう、人形の内部環境および外部環境を薬剤で汚染しない機構の考案・開発に時間を要した。製作されたシュミレーター人形の納入は平成28年3月となってしまい、その後のダミー薬を用いた経管投与後の視覚的な飛散・曝露状況の観察実験にまで平成27年度は行きつかなかった。また、エンドキサン錠のパッカー型分包機におけるこれまでの飛散状況(蓄積)については結果を見いだせたが、その後の清掃方法や調剤方法の検証を実施することができなかった。懸濁液のpH測定に用いるための抗がん剤の分割購入のための手続きを卸業者に依頼しているが、手続きまでの調整に時間を要しているため、先に抗がん剤以外の医薬品についての検討を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)開発した「繰り返し薬剤を経管投与しても周辺環境に飛散や曝露を引き起こさないモデル人形」を用いて、視覚的に曝露状況を観察可能な実験系を確立するために、実験に使用するためのダミー薬の検討、曝露状況の撮影、清掃方法や処理方法の具体的な内容の検討を精力的に推進していく予定である。
2)明らかとなったエンドキサン錠(シクロホスファミド)の粉砕や分割調剤に使用しているパッカー型分包機への飛散状況をもとに、エンドキサン錠の環境曝露に配慮した安全な調剤と清掃処理法について具体的な方法を提示するために実験的検証を推進していく予定である。 3)懸濁液のpHに起因する配合変化に着目して薬剤の懸濁液のpHを測定しているが、今後はさらに分割購入した経口抗がん剤の懸濁液のpHを測定し、先発医薬品と後発医薬品に関する液性リストを作成する。また薬剤の組み合わせを考慮した配合変化予測のためのデータベースの開発を目標に検討を進めていく予定である。
4)懸濁液が酸性あるいは塩基性を示す薬剤と他の薬剤との同時懸濁による配合変化についてHPLC法などによる主薬含量測定実験や外観の観察、チューブ通過性試験を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度には、エンドキサン錠の特殊な調剤実施後のパッカー型分包機に飛散したシクロホスファミドを外部測定機関に依頼して測定を実施したが、これまでの蓄積状況についてのみ測定を実施したため、その後の清掃方法や調剤方法の検証を実施することができなかった。このために、検証実験後の外部測定機関での測定のために見積もっていた費用を使用しなかったことが一因である。また、抗がん剤の分割購入の手続きを卸業者に依頼しているが、手続きまでの調整に時間を要しているため、購入予定の抗がん剤を平成27年度には購入できなかったことも一因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の使用計画としては、エンドキサン錠の特殊な調剤実施後の清掃処理法に関する実験に伴う費用や外部測定機関での測定費用に次年度使用額を含めて使用していく予定である。また、分割購入の手続きがまもなく完了するため、抗がん剤やその他の医薬品の分割購入のために使用する予定である。開発した経管栄養シュミレーター人形を用いた検証実験では、視覚的な飛散や液漏れなどの観察や試薬、飛散した薬剤の定量などに使用していく予定である。さらに抗がん剤の懸濁液のpH測定や薬剤同士の同時懸濁後のHPLC法による主薬含量測定実験の消耗品や試薬の購入のために使用していく予定である。
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