2015 Fiscal Year Research-status Report
終末期がん患者の呼吸困難に対する送風の有効性-ランダム化クロスオーバー比較試験
Project/Area Number |
15K20723
|
Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
角甲 純 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院看護部, 看護師 (90751438)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 看護支援 / 呼吸困難 / 終末期がん / 緩和ケア / 送風 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、呼吸困難を体験している終末期がん患者に対して、扇風機を用いて顔に送風した際の有効性を検証することである。本研究申請当初、倫理審査の承認が得られたのちに、本研究計画に則り、ランダム化クロスオーバー比較試験を開始する予定であった。しかし、研究計画の推敲を重ねていくうちに、①クロスオーバーデザインにおける回復期間を探索する必要がある、②コントロール群を先行研究のトレンドに沿った方法に変更する必要がある、と判断した。そこで、本研究に先駆けパイロット研究を計画した。 パイロット研究では、①回復期間の探索、②コントロール群の妥当性の確認を目的に研究計画を立てた。具体的には、①については、送風後の呼吸困難NRS値を10分毎(最大60分まで)に記録し、ベースラインに復帰するまでの時間を測定することとした。②については、コントロール群として適切な方法を探索するために、①顔への送風、②下肢への送風、③送風なし、全3パターンの介入を、研究参加者に実施することを計画した。なお、パイロット研究における目標症例数は、10例程度に設定した。 平成27年度は、上記研究計画にて倫理審査を受け、承認を得た。その後、UMINに臨床試験登録し、パイロット研究のリクルートを開始した。パイロット研究は、2015年9月~2016年3月の期間に緩和ケア病棟に入院した患者260名のうち、基準を満たした9名の患者に実施した。その結果、顔に5分間送風することで、9名中6名は呼吸困難の緩和が得られ、6名中4名は60分のフォローアップ期間に到達しても、呼吸困難NRS値がベースラインの数値まで復帰しなかった。また、下肢への5分間の送風および、5分間送風なしのパターンでは、どちらも呼吸困難NRS値は、9名全員で変化は見られなかった。本結果をもって、主研究の修正を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究申請当初から研究計画を修正し、主研究に先駆けパイロット研究を行った。そのため、当初の予定からは遅れていると判断した。以下にパイロット研究を行うことを判断した背景を報告する。 まず、研究申請当初、クロスオーバーデザインにて研究計画を立てていた。しかし、先行研究のレビューと、研究班での話し合いの結果、「回復期間を10分で設定することは、持ち越し効果の原因となり得る」という結論に至った。持ち越し効果を回避するために、送風後、どの程度の時間で呼吸困難NRS値が送風前(ベースライン)の呼吸困難NRS値まで復帰するのかを確認する必要があると判断した。 次に、顔への送風のコントロール群として、リストバンドの是非について研究班内で話し合った。話し合いでは、①リストバンドを用いた先行研究が1本のみに限られていること、②終末期がん患者では浮腫を併発していることでリストバンドの装着が困難となる可能性があること、を確認した。また、他の先行研究では、顔への送風に対して、下肢への送風がコントロール群として設定されていることを確認した。しかし、下肢への送風についても、「送風なし」と比較しているわけではないため、下肢へ送風することで生じる交絡因子を排除しきれないという課題が残っていた。そこで、回復期間の確認と、コントロール群の妥当性の確認を目的に、パイロット研究を計画した。現在はパイロット研究が終了し、論文化の準備と主研究の修正を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
パイロット研究の結果を参考に、主研究であるランダム化クロスオーバー比較試験の修正を行っている。 まず、パイロット研究の結果、顔への送風で効果の得られた6名のうち4名は60分のフォローアップ期間の到達しても、呼吸困難NRS値が送風前(ベースライン)の値に復帰しなかった。このことから、顔への送風後の回復期間を設定することは困難であると判断した。研究デザインとしては、クロスオーバーデザインを用いることができないため、並行群間比較のランダム化比較試験へと修正した。 次に、コントロール群について、下肢に5分間送風するパターンと、5分間送風なしのパターンで、結果は同様であった。このことから、どちらをコントロール群に設定してもよい可能性があると判断した。本研究では先行研究を参考にし、「下肢への送風」をコントロール群として活用することとした。 今後は、主研究の内容を修正した後、倫理審査委員会に修正申請を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
本研究申請当初、研究班会議(研究班内での話し合いや進捗報告については)の開催場所として、筑波と仙台を考えていた。しかし、研究班会議が都内で開催される方向に決定したため、開催に関わる費用が削減された。 また、研究内容の推敲を重ねたことで、倫理審査の申請が想定していた時期よりも遅れた。そのことで、研究実施に関わる必要物品などの購入を見送り、実支出額が削減された。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度でパイロット研究を終えた。その結果を公表するための論文投稿に関わる投稿費用での支出、学会発表に関わる支出などを、申請書当初の予定からプラスして考えている。
|