2015 Fiscal Year Research-status Report
成人先天性心疾患患者の就労と社会保障制度利用状況に関する包括的研究
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15K20736
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
落合 亮太 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90587370)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 先天性心疾患 / 就労支援 / 就労継続支援 / 障害者手帳 / 移行期支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は今後予定している質的・量的研究の具体的な研究計画策定のために、まず、研究者が過去に実施した調査から本研究に関連したデータを抽出し、再分析を行った。対象は患者会に所属する20歳以上の会員373名で、年齢の中央値は28歳(範囲:20-78)であった。就労意欲が「とてもある」または「まあある」と回答したのは313名(83.9%)で、このうち、実際に就労していたのは211名(67.7%)であった。就労者の3割以上が就労に際して、「休暇を取得しやすい環境」「職務内容の調整(力仕事の回避など)」「医療面への配慮(通院・服薬管理など)」を希望していた。就労意欲はあるが現在就労していない者(退職者を含む)を対象とした、就労していない理由に関する自由記述では、「職場の理解が得られなかった」といった先行研究でも指摘されている問題に加え、「採用時、障害者であることを伝えていなかった」「障害者雇用枠で入社せず、一般雇用で入社してしまった」といった入職時の問題、「契約満期で雇い止めとなった」といった雇用形態に伴う問題が指摘されていた。さらに、「病状・体力にあった仕事が何かわからない」との指摘も見られた。本分析から、就労者に対しては、業務内容調整や通院休暇を取得しやすい環境の保証、就労希望の者に対しては職場探しから入職時の留意点までを包括的に支援できる体制整備が必要と考えられた。次に、成人先天性心疾患患者の就労に関する上記の分析結果に加え、関連文献レビューを行ったうえで、研究に協力する小児科医、心臓血管外科医、看護師計6名で協議し、現在の就労支援体制に関する問題点を抽出した。その結果、上記の分析結果に加え、就職時に影響力の大きい障害者手帳の認定手続き上の問題、障害者手帳取得に伴う就労支援と難病に対する就労支援との兼ね合い、就労支援と障害年金の相互の位置付けの整理が課題として抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた患者、家族、医師、看護師、心理士、福祉専門職を対象とした面接調査は実施できていないが、既存データの再分析と医療専門職者からの意見聴取により、成人先天性心疾患患者の就労と社会保障利用に関する問題点を整理することができたため、研究プロセスは概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、本年度対象に含めることができなかった心理士、福祉専門職とした面接調査を実施する必要がある。さらに、本年度の成果と上記の面接調査結果に基づいて自記式質問紙を作成し、国内の複数施設に通院する患者・家族を対象に質問紙調査を行い、成人先天性心疾患患者の就労と社会保障制度利用の実態を明らかにする必要がある。
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Causes of Carryover |
平成27年度は予定していた複数の医療専門職を対象とした面接調査を行わなかったため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
面接調査に必要な交通費、対象者への謝金、逐語録作成関連費用、質問紙の印刷、郵送費用、分析ソフトウェアの購入などに研究費を使用する
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