2015 Fiscal Year Research-status Report
福島原発事故避難後に認知症を発症した高齢者を介護する家族の生活状況と精神的健康
Project/Area Number |
15K20768
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 良香 福島県立医科大学, 看護学部, 助手 (70746974)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 福島原発事故 / 避難者 / 認知症高齢者 / 介護 / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は福島原発事故により、避難生活を余儀なくされている避難者の中で、認知症の高齢者を在宅介護する家族介護者を対象として、避難先での生活状況および精神的健康について把握し、必要な支援の具体的検討のための基礎資料を得ることである。 対象者は、避難指示により全住民が避難している福島県A町の住民で、避難住宅で在宅生活している者を介護している79人の家族介護者に、戸別訪問を行い質問紙による聞き取り調査を実施した。このうち、所在地が非該当であった者3人と、複数人を介護していた者5人を除いた71人を分析対象とした。調査内容は、主介護者の基本属性および介護生活状況や介護者の精神的健康度(改訂出来事インパクト尺度日本語版 IES-R、日本語版GHQ12)、介護負担感(Zarit介護負担尺度日本語版)とした。 その結果、対象者は5割が65歳以上で、8割が何らかの疾患や症状を有していた。また、震災・原発事故の影響を受け主観的健康は悪いと4割が回答し、PTSDが疑われる者、何らかの精神症状を有する対象者はそれぞれ約3割であった。介護負担感の平均得点は29.2±16.2点で、被介護者の認知症の行動心理症状別で有意差が認められた。 被介護者のなかで、認知症の診断を受けている者は約3割であったが、被介護者の認知症の行動心理症状は約7割に認められた。認知症の診断の有無では、被介護者の要因、介護期間以外の項目では有意差は認められなかった。 本研究の対象者は、震災や避難生活による影響を受けて、精神的健康が損なわれた者が存在し、介護負担感を抱えながら避難生活を送っていた。そして、被介護者の要因や避難生活に伴う要因により、身体的・精神的・社会的生活の負担と悪化が今後も続くことが懸念された。また、被介護者の認知症の行動心理症状と介護負担感の関連から、被介護者の認知症の診断や治療に結びつていないことも推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は、計画書に添って実態調査を行い、震災や福島原発事故により避難生活を継続している状況において、認知症高齢者を介護する家族の生活と精神的健康の実態を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は避難生活を継続している状況において、認知症高齢者を介護する家族の生活と精神的健康の1年間の変化を明らかにする追跡調査と新たな避難者への実態調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2015年度は、研究者独りで実態調査を行ったため、人件費や謝金が発生していなかったこともあり、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は、他の避難区域の市町村の実態調査に加え、2015年度の追跡調査も行う予定である。調査チームを組み研究を進めていくため、物品費や人件費、交通費、謝金が2015年度より多く発生する。 また、研究対象者への介入のためのサロンなどを計画しているため、サロン開催時の物品や会場の費用や人件費への使用が必要となる。
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