2016 Fiscal Year Research-status Report
HuRをターゲットとした分子標的薬の開発~がんの制御を目指して~
Project/Area Number |
15K20822
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
格口 渉 北海道大学, 大学病院, 助教 (70740645)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HuR |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に作製したHuR recombinant proteinを用いて、HuRに結合する化合物の検索を行った。まず、HuRに対してDSF(differential scanning fluorometry)が使用できるかどうか検索した結果、ピークが単一で、ぶれが少なく、使用可能な実験方法であることを確認した。DSFに関しては北海道大学大学院薬学研究院創薬化学研究教育センターの協力の下、既存薬ライブラリーの検索を行った。既存薬ライブラリーはMicro Source社のPharmacon-1600とした。DSFの結果、いくつかの化合物に温度の変化が見られ、その化合物に対して濃度依存的な温度変化があるか確認し、濃度依存的に温度変化が見られ、構造的かつ文献的にHuR proteinと結合していると考えられた化合物を選択した。 既存薬ライブラリーはUS-Drug CollectionとInternational Drug Collectionにおいて上市された化合物であり、実際の人への投与も行われてきた薬剤である。これまでにも、標的とされる疾患以外の作用を見出され、忘れられていた化合物が日の目をみたことは数多くある。新規薬剤の開発は費用面、時間面ともに大量に浪費してしまうが、既存薬におけるDrug repositoning はそれらを大幅に省くことが可能となる。 この化合物は、作用機序がよく解明されておらず、HuRの結合いよって効果を発揮していることを証明できると新規発見となる。また、口腔癌に対する作用は研究されておらず、口腔癌に対する新しい抗癌剤となる可能性を秘めていると考えられる。 当初の研究計画通り、ヒット化合物の候補を見出すことができ、順調に研究が進んでいると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では今年度はHuRに対する有効な化合物の検索としていた。HuRに対する結合をみるため、いくつかの方法が考えられたが、DSFが可能であれば一番早くかつ簡便に結果が求められると考えられ、実行した。DSFはHuRに対して有効かつ素早く検索できることがわかったため、化合物の選択に移ることができた。化合物ライブラリーは様々なものがあるが、その後の臨床応用を考えると、既存薬を用いたDrug repositioningを狙うことが最も近道であると考えた。既存薬ライブラリーの1600化合物とHuRをDSFで検索したところ、候補となる化合物を見出すことができた。よって、その化合物は細胞実験に使用可能であるため、当初の研究計画どおり3年目は細胞実験が可能となったため、順調に研究が進んでいると言える
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Strategy for Future Research Activity |
化合物の細胞内での挙動の解析を行う。具体的には口腔がん細胞(HSC-3)に化合物を投与し、HuRの発現量や核外輸送への影響、HuR・ARE-mRNA結合の阻害を証明する。HuRタンパク発現量とHuRタンパク核外輸送への影響は、western blot法と免疫染色法で検討する。ARE-mRNAの安定化への影響を定量性Real time PCR法で検討する。その遺伝子は申請者が報告しているc-fosなどによって検討する。がん細胞における増殖、浸潤抑制の解析をする。化合物によるHuR機能抑制によって、口腔がん細胞の増殖能や浸潤能が実際に抑制されていることを証明する。増殖能の確認は、単純な細胞数のカウントとスクラッチアッセイで行う。浸潤能の確認はマトリジェルを用いて行う。これらによって、この化合物がHuRに作用していることを間接的に証明する。必要であれば、HuRのどの部位に作用しているかX線構造解析装置などで確認する。また、HuRがタンパクやmRNAと相互作用をするRRMに関して、RRMをそれぞれ欠損させたタンパクを作製し、DSFにて結合を確認することでも、この化合物の作用箇所が解明できるかもしれない。
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