2016 Fiscal Year Research-status Report
第一次世界大戦の戦前から戦後期にかけての『自衛―独立ユダヤ週刊新聞』の活動状況
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15K20823
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 寿 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (40733308)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / 東欧近現代史 / ユダヤ研究 / ナショナリズム / 『自衛』 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者の研究は、プラハのドイツ語によるユダヤ人新聞『自衛―独立ユダヤ週刊新聞 (Selbstwehr - Unabhaengige juedische Wochenschrift) (1907-1938)』(以下『自衛』)の活動状況についての調査およびその記述である。本年度は昨年ウィーンで収集した過去記事の読解を進めた。昨年度の研究実績は口頭報告のみで終わってしまっていたため、本年度はより多くの時間を論文の執筆のために費やした。 『自衛』はテオドール・ヘルツルのシオニズムとは異なり、ユダヤ民族による単独の国家建設を目標に置いていない。『自衛』では、ユダヤ民族はオーストリア=ハンガリー帝国のなかで生きるべきであるという立場が取られていた。報告者が本年度の課題として取り上げたのは、『自衛』はハプスブルク帝国のどこにユダヤ民族にとっての生存の可能性を見出していたのかという問いである。本年度は投稿論文を通じてこの課題への『自衛』の答えを検討した。 当初の研究計画としては、第一次世界大戦の開戦からチェコスロヴァキア共和国独立期(1914-1918)の活動記述を考えていたが、新聞の嵩が膨大の量におよぶことから、計画に変更を加えた。戦前期の『自衛』だけでも、「国民連邦制」構想といった興味深い議論がなされている。『自衛』はドイツ文学を初め、その存在は知られているものの、多くの分野において紹介がなされていない。報告者は学会に『自衛』の基本的な活動方針を仲介することを自分に課されている課題ととらえ、学会誌への投稿を優先した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『自衛』の過去記事はかなりの量になるため、読解にはどうしても時間がかかる。読解については時間がかかっているが、本年度は目標に置いていた査読雑誌への投稿が実現した。新聞の読解作業に時間がかかっていることを除けば、研究成果は出始めているものととらえている。
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Strategy for Future Research Activity |
『自衛』はオーストリア=ハンガリー帝国におけるユダヤ民族の生存の可能性を二重帝国制から「国民連邦制」への再編に展望していた。しかし、この「国民連邦制 (nationalfoederativ) 」の構想は、『自衛』の独自に創出したものではなく、オーストリアの社会民主主義者リヒャルト・ハルマッツ (Richard Charmatz) が提起した概念である。本年度は、ハルマッツの著作の読解を進め、国民連邦制をめぐるハルマッツと『自衛』のあいだにある連続性と差異を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成27年度(2015年)に海外図書館で収集してきた資料の読解が進まなかった。そのため、平成28年度(2016年)には海外図書館での文献調査を実施していない。海外図書館への渡航費用として、平成29年度(2017年)への繰越を希望した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、海外図書館(ドイツ・フランクフルト、オーストリア・ウィーン)での文献調査を予定している。ほかスキャナーなど、マイクロフィルム媒体の読解にかかる機材の購入を検討している。
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