2017 Fiscal Year Research-status Report
耕作放棄地利用に関する生物多様性と経済活動の両立:忘れられた草地生態系への考慮
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15K20842
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
赤坂 卓美 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (40748357)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 耕作放棄地 / 再利用 / 生態系サービス / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソーラー発電施設への立ち入りが困難な場所も多く存在するなかで、発電施設管理に関わるコストの内情を事業者への聞き取りにより整理した。 また、エネルギー供給施設での実験をするにあたり、耕作放棄地自体が有する機能について検討した。まず、耕作放棄地が有する生態系回復機能について、人の介入なしに湿地環境が回復するかを地上徘徊性昆虫を指標として検討し、ある程度の回復が認められることを明らかにした。ただし、希少種や湿地依存性の高い種については積極的な人の介入による放棄地の管理が重要であることも明らかにした。 次に、耕作放棄地自体が農畜産業に齎すサービスについても検討した。その結果、耕作放棄地は、様々な鳥類の生息の場を提供することを介して、周囲の農地の害虫の捕食量を増加させている可能性が示唆された。また、耕作放棄地にヒツジを飼養することにより、ヒツジの体内の寄生虫量が現象する可能性を示唆した。これらのことから、耕作放棄地の存在は、生物多様性のみでなく、農畜産業に対して豊富な生態系サービスを享受する可能性が期待される。 これらを踏まえ、耕作放棄地をエネルギー施設として利用する際、より多面的な視点での生物多様性維持の価値を評価することの重要性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現状、エネルギー施設での現地調査が遅れている。ただし、施設内での調査に関わる課題は解決しており、また、そもそもの放棄地自体の価値を多面的に評価することについても一定の成果をあげられている。 次年度にはソーラー発電施設での現地調査も実施する予定であり、発電施設における多様性の維持の可能性についても検討することが可能であると判断される。このことから、計画は概ね順調であると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで整理してきた課題を元に、発電施設において管理強度と生物多様性の関係を明らかにする。このことに対し、調査可能な施設は既に確保済みであり、速やかに調査が実施可能である。 また、地方自治体と連携し、新たな生物多様性を維持可能な耕作放棄地の再利用方法についても検討する。これについても調査実地可能な耕作放棄地の確保や、地方自治体との役割分担も協議済みであることから、速やかな実施が可能であると判断される。 これらが終了した後に、これまで得られた成果を整理し、今後の耕作放棄地の有効な再利用方法について議論する予定である。
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Causes of Carryover |
発電施設における現地調査が実施できなかったなど、いくつか計画に遅れが生じてしまったため予算の使用額が少なかった。これらの予算については次年度の実施予定の現地調査で使用予定である。
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