2017 Fiscal Year Research-status Report
ニコチンによる口腔がん細胞増殖メカニズムの解明と科学的根拠に基づく禁煙の啓蒙
Project/Area Number |
15K20853
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西岡 貴志 東北大学, 歯学研究科, 助教 (50641875)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ニコチン / 口腔がん |
Outline of Annual Research Achievements |
タバコの煙には数千を超える化学物質が含まれ、そのうち数百種類以上が発がん物質を含む有害物質である。タバコの構成主成分の1つであるニコチンは、依存性の観点から多く研究がなされてきたが、本研究において、ニコチン自体が、口腔がん細胞の増殖や分裂、分化におよぼす影響を見出してきた。 本年度は、前年度に引き続き、口腔がん細胞であるHSC-2を培養し、同細胞にニコチン刺激を行い、ニコチンによる口腔癌細胞への細胞増殖能を解析した。ニコチン以外の刺激を極力排除するために、ニコチン刺激前日に通常細胞培養液中で使用するウシ胎児血清(FBS)10%から0.5%に下げた状態で培養してから解析した。ニコチンがニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を介して上皮成長因子受容体であるEGRFのリン酸化を誘導し、その下流の分子促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)のサブファミリーであるERK1/2を活性化するという前年度の結果に続き、今年度は細胞シグナル伝達に重要な役割を果たすAKTについても解析を行った。AKTにおいてもERK1/2と同様にニコチンによりリン酸化が誘導され、インヒビターを使用することで、そのリン酸化シグナルが抑制された。増殖シグナルだけでなく細胞死や細胞生存においてもニコチンの刺激が入ることで活性化されることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度内に投稿する予定であったが、他の業務に予定よりも時間を費やす必要があったため、当初よりも投稿までに時間がかかっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ニコチンの刺激によりEGFRのリン酸化を誘導しその下流のERK1/2やAKTシグナルもリン酸化が誘導された。これらにより細胞増殖シグナル、細胞死や細胞生存への影響も示唆された。2017年はこの成果を第59回歯科基礎医学会学術大会(塩尻市)にて発表を行っている。年度内の投稿を目指していたが、当初の予定よりも準備に時間がかかってしまっている。これまで得られたデータをまとめ、早期の論文投稿に向け時間を費やしたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
年度内に論文投稿に取りかかる予定であったが、他の業務に多忙を極め、論文提出に予定よりも時間を要しているため、補助事業期間の延長が必要である。延長額については、投稿費用に充ててるために使用したい。なお、論文投稿に必要な実験は概ね終了している。
|