2015 Fiscal Year Research-status Report
口腔機能と食形態のマッチングのための標準的な食塊潤滑性評価法の開発
Project/Area Number |
15K20854
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 恭恵 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50613064)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 嚥下 / 咀嚼 / 介護食 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトが食物を摂取するとき、固形の食物は、口腔内に取り込まれたのちに、歯と歯の間で噛み潰されたり、舌と口蓋の間で押しつぶされたりして、嚥下しやすい状態へと変化する。嚥下できるようになった食塊の状態は、単に食物が細かく砕かれているだけでなく、唾液と混和されることにより粘膜に対する摩擦を減じ、粘膜に対する潤滑性が増している。Hutchings とLillfordが1988年に提唱したDual threshold modelは食塊の『構造』と『潤滑性』の両方がある閾値を越えたときに嚥下が誘発されるというものであった。 今日、食塊の物性評価に頻用される評価指標で、潤滑性との関連が強いと考えられるのがTPA(texture profile analysis)による付着性であり、これは国が定める「えん下困難者用食品」の規格基準にも採用されている。しかし、食品に押し付けたステンレス製のプランジャーを食品から引き離す際、プランジャーが食品から受ける力を計測するこの方法による成績は、必ずしも口腔における食品の付着性や潤滑性を反映しない。 我々は、先行研究でウシ食道から剥離した筒状の粘膜を口腔粘膜の代替とし、一定の推進力を食塊に与えた際の食塊の移送速度に基づいて潤滑性を評価する方法を新規に開発した。この方法を用いて計測された移送速度は、咀嚼回数が嚥下閾値を越えると増大し、口腔内での食物の潤滑性を評価するのに非常に優れていたが、ウシ食道粘膜内径の個体差や、測定中にも進行する粘膜の変性が、測定の再現性確保の障害であることも判明した。そこで本研究課題では、ウシ食道粘膜と、その代替に合成樹脂膜を用いた際の測定結果を照合し、両者が良好な相関を示すような樹脂膜を探索することで、より再現性の高い潤滑性評価手法を開発することを目的とし、研究を遂行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に従い、特に問題なく進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、試験試料に、水分量を60~80%に変化させたインスタントマッシュポテトを用いて、ウシ食道粘膜で計測したのと同様の水分量で移送速度が急激に変化する樹脂膜を網羅的に探索する。また、必要に応じて、樹脂膜の表面処理を施したり、潤滑剤としての人口唾液の使用を試み、口腔内の状況をより強く反映する条件を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成27年度に購入予定であった電動スライダーが未購入であったことと、実験補助への謝金が発生しなかったために未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に未使用となった経費は、当初の予定通り電動スライダーの購入と実験補助に対する謝金にあてる。
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