2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K20856
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
斎藤 将樹 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50400271)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 副甲状腺ホルモン受容体 / 4.1Gタンパク質 / 骨芽細胞 / アデニル酸シクラーゼ / サイクリックAMP |
Outline of Annual Research Achievements |
副甲状腺ホルモン (PTH) 製剤は種々の骨粗鬆症治療薬の中で唯一、骨芽細胞を活性化し骨形成を促進する。PTHは、三量体Gタンパク質共役型受容体 (GPCR) の一種であるPTH受容体に作用し、Gs/サイクリックAMP (cAMP) シグナルを介した骨代謝回転に関与する。そのため、PTH受容体シグナルの分子調節機構を解明することは、骨粗鬆症治療法開発のための分子基盤の解明に繋がる。 (1) 申請者はこれまで、細胞膜裏打ちタンパク質4.1Gが、cAMP産生酵素アデニル酸シクラーゼ (AC) の活性を抑制することを見出した。本研究では、4.1GによるAC活性抑制機構を検討した。4.1GはHeadpiece、FERMドメイン、スペクトリン-アクチン結合ドメインおよびC末端よりなる。一方、ACの細胞内領域には N末、C1ループおおよびC2ループがある。ACの代表としてAC6を用いたところ、4.1G-FERMとAC6-Nが直接相互作用することがin vitro pull-down assayによって見出された。一方、HEK293細胞を用いた系により、AC6-Nは、4.1Gとの結合を介して細胞膜に分布することが示された。さらに、AC6-Nの過剰発現によって内因性4.1GとAC6の結合を抑制すると、AC活性化薬フォルスコリン誘導性のcAMP産生が増強した。以上より、4.1G-FERMはAC6-Nと直接相互作用することにより、PTH受容体/Gs/cAMPシグナルを抑制することが見出された。 (2) マウス骨芽細胞株MC3T3-E1細胞は、アスコルビン酸/β-グリセロリン酸含有培地中で維持することにより骨細胞様に分化する。骨芽細胞の分化過程における4.1G発現量をウェスタンブロット法にて検討したところ、分化誘導時間依存的に4.1Gが劇的に減少することが見出された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4.1Gが、AC活性の抑制を介してPTH受容体のGs/cAMPシグナルを抑制することは、申請者は既に報告済みであった (Goto and Saito et al., Cell. Signal., 25, 690-697, 2013)。今年度はそれを発展的に解析した。そして、AC6-Nのアミノ酸配列中に、4.1Gとの直接相互作用に関与する三連続アルギニン「RRR配列」を見出した。野生型AC6-N (AC6-N-WT) は細胞膜に分布するが、三連続アルギニンをすべてアラニンに置換したAC6-N-3A変異体は細胞質に分布したことより、AC6-Nは4.1Gとの結合を介して細胞膜に結合することが分かった。また、AC6-N-WTの過剰発現によりフォルスコリン誘導性cAMP産生量が増加したが、AC6-N-3Aの過剰発現では変化しなかったことより、4.1GがAC6-Nと直接相互作用することによってAC6活性が抑制されることが示された。 一方、骨芽細胞の分化誘導における4.1Gの生理的役割を検討するため、今年度はその初歩的なデータを得た。すなわち、アスコルビン酸/β-グリセロリン酸含有培地でMC3T3-E1細胞を維持し分化誘導すると、4.1Gタンパク質の発現量が劇的に減少した。このことは、4.1Gが減少することによって骨芽細胞の分化が進行しやすくなることを示している。 このように、PTH受容体/Gs/cAMPシグナルにおける4.1Gの役割を分子レベルで解析し、かつ骨芽細胞分化における4.1Gの役割についてポジティブデータを得ることが出来た。そのため、今年度はおおむね順調であると考える。しかし、未解明のことが多く残されており、次年度に検討する。
|
Strategy for Future Research Activity |
PTH受容体/Gs/cAMPシグナルにおける4.1Gの役割については、細胞局所におけるcAMP産生と4.1Gとの関係性について検討する。すなわち、脂質ラフトおよび非脂質ラフトでのcAMP産生量を測定することの出来るFRETプローブを用い、4.1Gノックダウンの影響を検討する。 一方、骨芽細胞分化における4.1Gの役割について検討するため、4.1Gを恒常的に過剰発現あるいはノックダウンしたMC3T3-E1細胞を作製し、アスコルビン酸/β-グリセロリン酸で分化誘導する。4.1G発現量の調節によって分化速度が変化するかどうか検討する。さらに、分化過程におけるcAMP産生量などのシグナル伝達についても解析する。 次年度はさらに、PTH受容体/Gs/cAMPシグナルにおける細胞質ダイニン軽鎖Tctex-1の役割についても解析する。申請者はHEK293細胞を用いた解析により、Tctex-1がcAMP産生量の亢進に関与するという予備的なデータを得ている。分子調節機構を詳しく検討するとともに、内因性にPTH受容体を発現するMC3T3-E1細胞におけるTctex-1のcAMP産生促進作用を解析する。
|
Causes of Carryover |
研究は概ね計画通りに進捗したが、効率的に行うことが出来たため、当初の計画より物品費が少額で済んだため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に必要な試薬、抗体や機器の購入費として次年度研究費の大半を充てる。研究成果の発表のため、および情報収集のため国内学会3つに参加する予定であり、その旅費として100千円を使用する。
|