2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K20856
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
斎藤 将樹 東北大学, 医学系研究科, 助教 (50400271)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨芽細胞分化 / 一次繊毛 / 4.1Gタンパク質 / ヘッジホッグシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度、マウス骨芽細胞株MC3T3-E1細胞をアスコルビン酸/β-グリセロリン酸 (AA/βGP) 存在下に20日間培養して分化誘導したところ、時間依存的に4.1Gタンパク質量が減少することを見出した。一方、一次繊毛にはヘッジホッグシグナル受容体のSmoothened等の膜受容体が優位に分布するため細胞外環境センサーとして働き、骨芽細胞の分化亢進を制御する。そこで本年度は、AA/βGP誘導性のMC3T3-E1細胞分化における一次繊毛および4.1Gの役割を検討した。まず、AA/βGP処置後の一次繊毛形成を免疫染色法により検討したところ、4日目で形成が顕著に促進されたが、20日目にはコントロールでも形成が起こり有意な差は得られなかった。そこで、AA/βGP処理4日目までの期間において、分化誘導および一次繊毛形成における4.1Gの役割を解析するため、short hairpin RNAを作製し内因性4.1Gをノックダウン (KD) した。その結果、分化誘導および一次繊毛形成のいずれも4.1G-KDによって顕著に抑制された。一次繊毛に分布したSmoothenedは、ヘッジホッグシグナル分子であるGli1のmRNA量の増加を介して骨芽細胞分化を制御する。AA/βGP存在下で培養されたMC3T3-E1細胞をSmoothened選択的アゴニスト、パルモルファミンで刺激し、Gli1 mRNA量をRT-qPCR法にて検討したところ、4.1G-KDによって有意に抑制された。以上の結果より、4.1Gは一次繊毛形成および一次繊毛由来ヘッジホッグシグナルを介し、骨芽細胞の分化亢進を制御することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、骨芽細胞分化誘導における4.1Gの役割について大きな進展を得ることが出来た。すなわち、4.1Gが一次繊毛形成および一次繊毛由来ヘッジホッグシグナルを介して、骨芽細胞の分化誘導を制御することを明らかにすることが出来た。本成果は当初の計画以上に進展した内容である。 一方、副甲状腺ホルモン (PTH) 受容体/アデニル酸シクラーゼ (AC) シグナルにおける4.1Gおよび細胞質ダイニン軽鎖Tctex-1の役割は、当初予定していた研究計画であるが、研究に費やす時間の確保が難しく解析がやや遅れている。 全体として、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であるため、これまで解析を進めてきた (1) AA/βGP誘導性の骨芽細胞分化における4.1Gの役割と (2) PTH受容体/ACシグナルにおける4.1GおよびTctex-1の役割を解析し、骨粗鬆症治療の分子基盤を包括的に理解する。 (1) 骨芽細胞分化の解析において、4.1Gによる一次繊毛形成機構を解明する。特に、4.1Gは中心体に分布すること、および4.1ファミリータンパク質の一種4.1Rはゴルジ体から細胞膜への小胞輸送を制御するとの報告例があることから、基底小体 (中心体) 形成およびRab11陽性リサイクリングエンドソームの細胞内輸送における4.1Gの役割ついて注目する。 (2) PTH受容体/ACシグナルの解析において、AC活性における4.1GおよびTctex-1の役割を骨芽細胞を用いて解明する。これまでの研究から、4.1GおよびTctex-1はそれぞれAC6のN末端 (AC6-N) に結合することが見出されているため、A6-Nの細胞膜会合における4.1GおよびTctex-1の関与を解析する。一方、骨形成タンパク質 (BMP) 発現量はサイクリックAMP (cAMP) 依存的に増加するとの報告がある。4.1GおよびTctex-1は、それぞれACを介したcAMP産生の減少および増加に関与するため、次年度はBMP mRNA量を検討する。
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Causes of Carryover |
研究は概ね計画通りに進捗したが、効率的に行うことが出来たため、当初の予定より物品費が若干少額で済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に必要な試薬の購入費として次年度研究費の大半を充てる。
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