2015 Fiscal Year Research-status Report
不均一地表面でのMonin-Obukhov相似則の検証
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15K20858
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小森 大輔 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (50622627)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 乱流フラックス / 不均一地表面 / Monin-Obukhov相似則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、不均一地表面がフラックス観測に及ぼす影響を明らかにし、不均一地表面上でのMonin-Obukhov相似則を検証することである。本年度は、乱流データの定常性によるフラックスの不確実性への影響の解明、H28年度以降に行う乱流物理モデルによる数値実験のためのモデルおよび検証データの整備を行った。 乱流データの定常性によるフラックスの不確実性への影響の解明に関しては、乱流データの定常性および乱流積分特性を用いた品質評価手法(Foken et al., 2004)を用いて、均一植生であるタイ国のキャッサバ畑および不均一植生であるタイ国落葉樹林のフラックスの不確実性を解析した。この結果、フラックスの相対不確実性が0.1より小さい場合のフラックスの品質はほぼ最良の評価であること、不均一植生の方がフラックスの相対不確実性は大きくなることが明らかとなった。 乱流物理モデルによる数値実験のためのモデルの整備に関しては、計算サーバを購入し、空間平均モデル(LES)を構築した。乱流物理モデルは、当初の計画ではレイノルズ平均モデル(RANS)を導入する予定であったが、フットプリント推定において空間平均モデル(LES)を使うこととしたため、RANSに比べると計算負荷は高くなるが、渦構造も捉えることができる非常に高精度であるLESを選定した。H28年度より、本計算サーバを用いて、数値実験および観測サイトのフットプリント推定を行う。 検証データの整備に関しては、均一植生であるタイ国キャッサバ畑にて異なる測定高度およびサンプリング頻度を20 Hzに上げた野外観測実験を雨季に行った。H28年度も他の地点や乾季などに継続して行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乱流データの定常性によるフラックスの不確実性への影響の解明に関しては、予定どおり均一植生であるタイ国のキャッサバ畑および不均一植生であるタイ国落葉樹林のフラックスの不確実性の解析し、平成27年度土木学会東北支部土木技術発表会およびInternational Symposium on Agricultural Meteorology 2016にて研究成果を報告した。現在、Journal of Agricultural Meteorologyへの投稿準備を進めている。 乱流物理モデルによる数値実験のためのモデルの整備に関しては、乱流物理モデルをレイノルズ平均モデル(RANS)から空間平均モデル(LES)に変更したため、モデルの導入に予定よりも時間がかかってしまい、理想的環境場での均一地表面上でのフラックスの不確実性の理論値の算定がまだできていないが、LESの導入によって、乱流フラックスの不確実性のメカニズムを解明するための数値実験にも今後取り組めることとなったことは当初の計画以上に進展した点である。 検証データの整備に関しては、予定どおり均一植生であるタイ国キャッサバ畑にて異なる測定高度およびサンプリング頻度を20 Hzに上げた野外観測実験を雨季に行った。 以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の野外観測実験を継続するとともに、これまでに得られたデータを基に、フラックスの不確実性を周辺環境要素や乱流物理モデルなどで解析して、植物生理的な不均一地表面上でのフラックスの不確実性を定量的に評価する。これらの結果より、植物生理的な不均一地表面上でのMonin-Obukhov相似則が成立する条件を明らかにする。 また、申請者が2003年からこれまで観測してきた、不均一地表面上である森林の異なる測定高度(30 mおよび100 m; 観測範囲1-10 km)におけるフラックスの不確実性を定量的に評価する。具体的には、2003年からの衛星データの対照となる観測サイト周辺の地表面状態の現地踏査を行い、観測サイトの不均一度を指標化する。なお、衛星データに関しては研究協力者に提供いただく。次に、Burba(2001)などを参考にしながら、購入した新規サーバを用いて観測サイトのフットプリントの推定を行う。そして、上記、地表面状態の指標およびフットプリント推定、観測領域内の主要地表面(天水田およびキャッサバ畑)からのフラックスの不確実性の解析結果を用いて、森林の異なる測定高度のフラックス観測の不確実性を解析することで、不均一地表面でのフラックスの不確実性を定量的に評価に評価し、不均一地表面上でのMonin-Obukhov相似則を検証する。
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Research Products
(3 results)