2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K20871
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
及川 高 沖縄国際大学, 総合文化学部, 講師 (60728442)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生活暦 / 政治運動のリズム / ルーチン性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は奄美大島および徳之島において現地調査を継続した。調査期間はそれぞれ1週間程度をとり、インタビューと巡検を重ねた。インタビューは昨年度同様に高齢者からの聞き取りを中心に進め、研究の所期目的である日本復帰に向けた政治運動と奄美の生活世界の接点を模索した。 その調査過程で着想に至ったのは、生業暦、あるいは一年の生活のリズムと、民衆の政治運動の相関性である。農業を基盤とした当時の現地の生活にとって、一年間とは平板な時間の経過ではなく、「余裕のある時期」と「困窮する時期」が交叉する一種のリズムとして営まれていた。そうした生活サイクルのリズムと政治運動への動機づけの相関性という視点は、従来の研究では(民俗学・人類学のみならず社会学や政治学においても)指摘されてこなかった要素であるが、今回の調査によって、政治運動そのものの組織化過程や盛り上がりに対して、生活暦のサイクルがどのように関わるのかということが焦点となり、かつその中身が具体的に見えてき始めた。それは、たとえば政治運動への動機づけが高まっていても農繁期が近づくと、人はどうしてもそちらに注力せざるをえない、という機制や、逆にそうした農作業のための協業が一種の政治的連帯の機運を作り出す、といったパターンを指している。 昨年度の調査で得られた、当時の若年層の抱く「将来への不安」のような長期的な時間感覚が奄美の復帰運動の下地になったというアイディアと合わせ、本研究計画は現在、これらの視点から当初の目的である奄美の本土復帰運動を新たな視点から記述することに研究の主軸を移している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査とデータの収集計画そのものは十分に当初の期待通り進んでいるといえる。半面で進捗上の課題はアウトプットにあり、現時点では成果の活字化や学会発表に至っていないため、上記の自己評価とした。ただ、論文としてのとりまとめ作業は進めており、最終年度にあたる2017年度中には成果を公表できるように計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究成果のとりまとめと論文化、および口頭発表によるアウトプットを重点的に進める。またこれに並行して、若干の補充調査を計画している。
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Causes of Carryover |
研究の進捗の関係から、当該年度の学会発表を見送ったため、その参加費・旅費見込み額が余った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度において見送った学会参加費としてあらためて計上するとともに、英語での論文発表を考えているため、英文校閲費などに用いて、研究成果のアウトプットに活用する予定である。
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