2017 Fiscal Year Annual Research Report
Ethnography about protest activity against administrative separation in Amami
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15K20871
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
及川 高 沖縄国際大学, 総合文化学部, 講師 (60728442)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 年齢階梯制 / 奄美アイデンティティ / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の調査では現地での聞き取り調査を継続するとともに、奄美の復帰運動に関する現地の資料群の収集に努めた。特に資料に関しては、回顧録や同人誌など、一般にはほとんど流通しなかった印刷物を含めて捜索し、約150冊をリスト化することができた。これらのリサーチは2017年11月までで一応の終了とし、以降は調査成果の分析を中心に研究を進めてきた。その成果として以下の2点の見通しをつけている。 第一には、復帰運動という社会運動に対し、伝統的な社会構造が想定以上に大きく関わっていることが分かってきた点である。ここでいう社会構造とは、従来「年齢階梯制」と称されてきた社会制度で、家格制が存在せず、同年齢帯の横のつながりが村落の自治に深く関わる体制である。奄美におけるこうした社会構造の存在は民俗学や文化人類学につとに指摘されてきた点であったが、こうした横の強いつながりは、特に10代後半から30代前後の若年層が復帰運動の中心になっていくうえで大きな前提となっていたことが今回の研究によって見えてきたのである。 第二には「奄美人」意識の形成である。従来の研究では奄美のアイデンティティは、鹿児島と沖縄の中間という地理的配置に基づき「境界性」に注目して論じられてきた。しかしながら今回の調査により、復帰運動の時期には既に明確な「奄美人」という積極的な意味でのアイデンティティの存在が確認された。さらにこれは復帰運動を通じて形成されたものではなく、大正期には確立されていたことが見込まれ、こうしたアイデンティティが存在したことが、奄美を主体とした社会運動を可能にしたものと考えられる。 更にこの点は第一点目とも関わり、「奄美人」意識が下地にあったからこそ、強いローカルリーダーに率いられるトップダウン式の社会運動ではなく、横の対等な連帯に基づいたボトムアップ的な運動が可能になったのである。
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Research Products
(1 results)