2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K20877
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石原 雅文 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助手 (50640885)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ゲージ重力対応 / Dブレーン / シュウィンガー効果 / 超弦理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンは、ディラックポイント周辺でバンド構造が線形になっており、グラフェン上の電子は、相対論的な粒子であるディラック粒子として振る舞う。よって、強電場の下では、電子とホールの対生成であるシュウィンガー効果が予想される。シュウィンガー効果による対生成によって、電気伝導度の特徴的な振る舞いが現れるなど興味深い物性を示すことが期待されるため、その性質を理論的に解明することが重要である。 本研究では、超弦理論のゲージ重力対応に基づいてシュウィンガー効果の性質を調べた。ゲージ重力対応によると、場の理論での温度が、重力理論でのAdSブラックホールのホーキング温度に対応する。また、シュウィンガー効果による粒子の生成率が、Dブレーンの作用の虚部に対応することが示唆されている。当研究では、反ドジッターブラックホール時空でのDブレーンの埋め込みを運動方程式を解くことで計算し、Dブレーンの作用の虚部を読み取ることで、シュウィンガー効果による粒子の生成率の温度依存性を調べた。その結果、生成率が温度の上昇とともに増加し、また、粒子の相構造を反映していることが判明した。また、このようにして求めた生成率の温度変化を、粒子の質量が温度によって有効的に変化したものとして捉えることで、粒子の有効質量を定義し、その温度依存性を調べ、粒子の有効質量が温度とともに減少していくことを示した。 研究の結果を論文としてまとめ、現在投稿中である。また、学会発表等を通じて研究成果を発表し研究者と議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予期していたように、グラフェン上の電子などのディラック粒子が、強電場中で対生成する現象であるシュウィンガー効果を、ゲージ重力対応を用いて研究し、研究成果を論文としてまとめ、投稿することができている。よって研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、シュウィンガー効果のさらなる詳細な研究とともに、超弦理論のDブレーンを用いて、グラフェン上での電子とホールの束縛状態であるエキシトンの凝縮によるグラフェンの相構造の解明や相転移の性質を研究していく。また、多層のグラフェンと多層のDブレーンの関係性の研究を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進展により、当初予期していたよりも多くの結果が得られ、その結果を発表成果としてまとめるのに時間がかかり、当初予定していた当該年度中の研究会の発表の一部を取りやめざるおえなかっため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際研究会、国内研究会に参加し研究成果を発表するための旅費、数式処理ソフトウェア、パソコン、記憶媒体、研究関連書籍を購入する物品費、他大学、他研究機関から議論をするため招く研究者のための謝金、旅費に使用する計画である。
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