2015 Fiscal Year Research-status Report
中性子回折を用いた有機非線形光学結晶の水素結合距離決定と高透過テラヘルツ光源作製
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15K20880
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
松川 健 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 助教 (60580876)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非線形光学結晶 / 粉末中性子回折 / 結晶構造解析 / テラヘルツ波 / 有機機能性材料 / 結晶成長 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
スチルバゾリウム誘導体DASTは広帯域テラヘルツ(THz)波発生可能である光学結晶である。THz帯の吸収特性解明が結晶内水素結合由来の振動により緩和可能という発想から、数種のハロゲン種置換型スチルバゾリウム誘導体材料の中性子回折を行い水素結合距離とTHz帯の吸収特性を比較した。 DASTに対して中性子回折による水素原子位置特定を試みた。軽水素化物での中性子構造回折では、インコヒーレントな散乱の影響によりバックグラウンドが高くなり、十分なブラッグパターンを得ることが困難な可能性があるため、重水素化DAST(DAST-d26)を合成して両者を比較した。DASTの中性子回折パターンでは高いバックグラウンドを示したが、結晶構造解析を実施するとDAST-d26と同程度解析できることが分かった。そこで、軽水素化物においてハロゲン種置換型材料であるCl置換材料DASCとBr置換材料DASBについても中性子回折を実施した。ハロゲン原子と近接水素原子距離は、ハロゲン種にすることによりDASTより拡張し、かつハロゲン種の中でも原子半径の大きい原子(Cl<Br)でより水素結合距離が拡張することが分かった。 DASBにおいてメタノール溶媒から結晶成長を試み、3mm角程度の結晶を作製した。FT-IRによりTHz帯の透過特性をDASTと比較した結果、2.5 -5.8 THz においてDASTよりも高い透過性を有していることを見出した。DASB とDASTの3 THzにおける吸収係数を比較するとそれぞれ49 cm-1と80 cm-1である。これにより、DASBの性能指数はDASTの2倍と見積もれる。これは、アニオン原子種のイオン半径が増大したことにより、空間を占有するハロゲン原子が嵩高くなり、水素結合距離が拡大された結果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であったハロゲン種置換型スチルバゾリウム誘導体の合成では、重水素化DASTも順調に合成できた。重水素化DASTと軽水素化DASTに関して中性子回折を実施した結果、軽水素化物を用いても水素原子位置を特定できることを明らかにした。さらに28年実施予定の結晶成長とTHz特性評価についても、3mm角のDASBを作製でき、またTHz特性も評価できた。ただし、一連の研究計画の中で、平成27年度の主軸である重水素化物合成に多くの時間を要した。本来4種類のスチルバゾリウム誘導体材料合成のため予定であったが、実際には2種類の合成にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
実際のTHz透過評価では、DASTとDASBの比較しか行っていないため、DASCや他のハロゲン種置換型材料についても有機合成・結晶成長を行いそれぞれ評価して、系統的にまとめる。また、多くのTHz帯吸収ピークの吸収起源を結晶構造から明らかにするため、詳細なTHz分光評価・解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
一連の研究計画の中で、平成27年度の主軸である重水素化物合成と結晶構造解析に多くの時間を要した。本来4種類のスチルバゾリウム誘導体材料合成のため予算を計上していたが、実際には2種類の合成にとどまったため未使用試料合成費がでた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、予定していた2種のハロゲン種スチルバゾリウム誘導体材料合成費用に予算を計上する予定である。
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Research Products
(3 results)