2016 Fiscal Year Research-status Report
福島県浪江町を流れる請戸川における放射性ストロンチウム汚染実態の解明
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15K20881
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
苅部 甚一 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 助教 (10596935)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射性ストロンチウム / 骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度は前年度と同様に放射性ストロンチウム(Sr)汚染地域を流れる請戸川の上流および中・下流域と請戸川に合流する高瀬川の上流域において,環境試料(河川水,河床堆積物,魚類,河川周辺の土壌等)の採集を行い,放射性Sr分析に必要な試料量を十分に確保できた.従って,土壌,河川水,魚類に含まれる放射性Sr濃度の時間変化(H27~H28)についての検討も可能となった.また,放射性ストロンチウム分析に関しては,分析に掛かる時間や経費の節減を目的として新たな簡略・迅速分析法の検討を行い,実試料分析が可能な状況となった.今までの分析法と上記の迅速分析法を用いて各環境試料を分析した結果,以下のことが分かった.汚染地域である請戸川の調査地点における土壌中の放射性Sr(Sr-90)濃度が,一部地域において北海道および福島第一原子力発電所(原発)事故以前の福島県内の土壌中の濃度よりも特異的に高くなっていることが分かった.河川水およびイワナの骨についても土壌中のSr-90濃度が特異的に高い地点でSr-90濃度が高い傾向が見られた.以上の結果から,請戸川上流の一部地域においては陸域環境(土壌)だけでなく水環境中(河川水,魚骨)でも原発事故に由来する放射性Srが今も検出できるほどに分布していることが明らかとなった.また,その原発事故により土壌に沈着した放射性Srの一部が河川に溶出してイワナの骨に蓄積するという放射性Sr移行経路が示唆される結果となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度に予定していた放射性Sr分析用の試料採集は予定通りに実施することができた.また,新たに放射性Sr分析法(迅速分析法)を検討し,確立した分析法により環境試料の分析を行うことができた.さらに,その結果を学会で発表することもできた.従って,本研究は全体的に順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は,昨年度と同様の調査を行うと共に,今まで採取した試料の分析を進め,H28年度に得られた請戸川流域の放射性Sr分布状況(時空間分布)をより詳細に明らかにする.
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Causes of Carryover |
H28年度は当初の計画に従って助成金を使用したが,わずかに助成金が余る状況となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度はこの残額と合わせて,H29年度の使用計画(消耗品購入,旅費)に従って助成金を使用する予定である.
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