2015 Fiscal Year Research-status Report
乾燥地沿岸農業地域における地下水塩水化の評価と予測:地下水質への灌漑の作用と効果
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15K20895
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
河内 敦 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10582364)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 灌漑用水 / 地下水揚水 / 貯水池 / 塩水浸入 / 半乾燥地域 / 地下水流動 |
Outline of Annual Research Achievements |
対象地域の地下水揚水量を定量化するため、現地の農業水利組合の協力の下、2010年から2013年の農地面積と灌漑用水量に関するデータを収集した。また、農家の灌漑行動をモデル化するため、対象地域内の2つの農業水利組合を対象として、聞き取り調査を行った。各月の灌漑用水量、地下水と地表水の使用量の割合、収入と支出に関して30サンプルを得た。それらのデータを基に、農地面積と灌漑用水量の単相関モデルを作成し、対象作物(ペッパーとトマト)の単位作付面積あたりの必要灌漑用水量を推定した。また、各農家への聞き取り調査の結果から、灌漑用水量に占める地下水使用量の割合を、対象作物ごとにモデル化し、地下水使用量の推定を行った。そして、土地利用図を基に対象地域全他の灌漑用水量と地下水揚水量を定量化した。地下水揚水量と地下水位に相関がみられ、地下水揚水量が多いところで地下水位の低下が顕著であった。 また、これまで得られている地下水試料中の微量元素を分析した。分析した微量元素Br, B, Srイオンは、それぞれ水―岩石溶解反応や地下水への塩水浸入の指標として使用される元素である。その結果、それぞれの元素の空間分布と対象地域の地質分布、及び塩素イオンやNa, Caイオンの空間分布との間に関係性が認められ、塩水浸入地域の特定が可能となった。この結果を基に、対象地域の地下水流動と地質構造の概念モデルを作成した。この成果を基に、今後数値解析における計算対象領域のパラメータ設定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象国の情勢悪化に伴い、現地調査が十分にできず、観測機器の設置も遅れている状況であるが、現地の協力研究者と協同で、機器の設置を平成28年度の当初に行い、データの収集を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
対象地域の地表水を用いた灌漑が、半乾燥地域海岸帯水層に対して、どのような効果を及ぼすのかについて、数値解析で検討を行う。数値解析に必要なデータの収集を今後本格的に行って予定であるが、これまでに地下水質と水位のデータは、十分に得られており、気象データを必要最小限のデータが得られている。そのため、データ収集と並行して、数値解析を行っていく。また、数値解析を行う際には、オーストラリアのNational Centre for Groundwater Research and Trainingの地下水研究者の協力を得る予定である。
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Causes of Carryover |
現地の情勢悪化のため、購入を予定していた観測機器の設置ができなかった。また、それに関連して予定していた現地調査を実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に購入を予定していた観測機器の購入と、現地への設置を行う。また、数値解析に使用するプログラム、物理実験に使用する消耗品等を購入する予定である。
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