2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K20897
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柏木 隆成 筑波大学, 数理物質系, 講師 (40381644)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ジョセフソン接合 / 高温超伝導体 / マイクロ波・テラヘルツ波 / ナノ・マイクロデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
高温超伝導体を用いたテラヘルツ帯の発振素子の高出力化を目指し研究を進めた。発振素子は,Bi2Sr2CaCu2O8+d(Bi2212)単結晶をメサ構造に加工したものである。Bi2212単結晶に自然に内包される多重ジョセフソン接合におけるジョセフソン効果が電磁波発生の起源である。電磁波を取り出すためには,このメサ構造に直流電流・電圧を印加する必要がある。ただし,素子動作時の自己発熱が発振特性に影響を及ぼすことが最近分かってきた。 よってこの自己発熱を抑制するため,メサ構造下部に残る超伝導基板を排除した「単独メサ構造」の作製方法の開発・改良,及び単独メサ構造からの熱を効率良く逃がす高排熱素子構造の改良等を中心に行った。様々な形状・サイズのBi2212単独メサ構造を作製し,高排熱素子構造を用いて素子の発振特性を評価した。 発振強度の最大値は現時点でも数~数十マイクロワットレベルである。ただ,いくつかの特定の周波数で大きく発振出力が増強されることや,動作する接合総数の調整により発振出力が変化する振る舞いなど,高強度化に向けた指針も得られている。よって,これらの点にも着目しながら今後も研究を進める。 一方,発振周波数に関して大きな進展が得られた。最も高い周波数として,矩形型メサでは1.6 THz,正方形型メサ構造では1.6 THz,円盤型メサでは2.4 THz程度の発振を得ることに成功した。これは,これまでBi2212を用いた発振素子で報告のあった周波数より2倍以上向上したことに相当する。また,素子温度を調整することで発振周波数を広く調整する事が可能であり,例えば円盤素子では,0.5~2.4 THzまでの周波数が一つの素子から得られた。これは,開発している発振素子が連続波発振器でありながら,テラヘルツ帯の広範囲にわたって発振周波数をカバーできる点で大きな利用価値がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高排熱構造を用いた発振素子により,発振強度を特徴づける性質を複数観測できている点や,発振周波数領域の格段の向上など,開発する発振素子の性能が確実に向上しており,順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は,評価サンプル数の絶対数を増やし発振強度の限界値を確認すること,及び発振素子の作製の技術,及び高排熱構造の改良を進め出力の向上を目指す。また複数素子の同時動作などによる出力向上なども試みる。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Efficient Fabrication of Intrinsic-Josephson-Junction Terahertz Oscillators with Greatly Reduced Self-Heating Effects2015
Author(s)
T. Kashiwagi, T. Yamamoto, H. Minami, M. Tsujimoto, R. Yoshizaki, K. Delfanazari, T. Kitamura, C. Watanabe, K. Nakade, T. Yasui, K. Asanuma, Y. Saiwai, Y. Shibano, T. Enomoto, H. Kubo, K. Sakamoto, T. Katsuragawa, B. Markovic J. Mirkovic, R. A. Klemm, and K. Kadowaki
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Journal Title
PHYSICAL REVIEW APPLIED
Volume: 4
Pages: 054018-1-16
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] A high-Tc intrinsic Josephson junction emitter tunable from 0.5 to 2.4 terahertz2015
Author(s)
Takanari Kashiwagi, Kazuki Sakamoto, Hiroyuki Kubo, Yuuki Shibano, Takuma Enomoto, Takeo Kitamura, Kentaro Asanuma, Takaki Yasui, Chiharu Watanabe, Kurama Nakade, Yoshihiko Saiwai, Takuya Katsuragawa, Manabu Tsujimoto, Ryozo Yoshizaki, Takashi Yamamoto, Hidetoshi Minami, Richard A. Klemm, and Kazuo Kadowaki
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Journal Title
Applied Physics Letters
Volume: 107
Pages: 082601-1-5
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] 高廃熱構造を用いた固有ジョセフソン接合系Bi2212テラヘルツ発振素子の発振特性III2016
Author(s)
柏木隆成, 北村健郎, 渡辺千春, 柴野雄紀, 幸良彦, 榎本拓真, 久保裕之, 坂本和輝, 桂川拓也, 湯浅拓実, 田中大河, 小守優貴, 辻本学, 山本卓, 吉崎亮造, 南英俊, 門脇和男
Organizer
日本物理学会
Place of Presentation
東北学院大学 (宮城県仙台市)
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
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[Presentation] Bi2212高温超伝導体単独メサデバイスの温度分布測定2016
Author(s)
渡辺千春, 南英俊, 北村健郎, 柴野雄紀, 幸良彦, 久保裕之, 坂本和輝, 桂川拓也, 湯浅拓実, 田中大河, 小守優貴, 柏木隆成, R. A. Klemm, 門脇和男
Organizer
日本物理学会
Place of Presentation
東北学院大学 (宮城県仙台市)
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
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[Presentation] A high Tc superconducting terahertz emitter operated from 0.5 to 2.4 THz2016
Author(s)
T. Kashiwagi, K. Sakamoto, H. Kubo, Y. Shibano, T. Enomoto, T. Kitamura, , K. Asanuma, T. Yasui, C. Watanabe, K. Nakade, Y. Saiwai, T. Katsuragawa, T. Tanaka, T. Yuasa, , M. Tsujimoto, R. Yoshizaki, T. Yamamoto, H. Minami, R.A. Klemm, K. Kadowaki
Organizer
APS March Meeting 2016
Place of Presentation
Baltimore (U.S.A)
Year and Date
2016-03-14 – 2016-03-18
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[Presentation] 高温超伝導帯THz波発振デバイス内に生じた電位分布が発振周波数特性に与える影響2015
Author(s)
渡邉千春, 南英俊, 北村健郎, 榎本拓真, 幸良彦, 柴野雄紀, 桂川拓也, 久保裕之, 坂本和輝, 山本卓, 柏木隆成, R. A. Klemm, 門脇和男
Organizer
日本物理学会秋季大会
Place of Presentation
関西大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2015-09-16 – 2015-09-19
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[Presentation] 固有ジョセフソン接合系Bi2Sr2CaCu2O8+δ単独メサ構造によるテラヘルツ波発振II2015
Author(s)
北村健郎, 柏木隆成, 辻本学, 渡辺千春, 柴野雄紀, 幸良彦, 久保裕之, 坂本和輝, 桂川拓也, 山本卓, 南英俊, 門脇和男
Organizer
日本物理学会秋季大会
Place of Presentation
関西大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2015-09-16 – 2015-09-19
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