2015 Fiscal Year Research-status Report
膵α細胞におけるSirt1の機能解析とグルカゴン分泌異常の発症メカニズムの解明
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15K20901
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
菊池 司 群馬大学, 生体調節研究所, 研究員 (40739009)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グルカゴン / Sirt1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「α細胞においてSirt1はUCP2の発現抑制を介してグルカゴン分泌能を調節し、FoxA2およびFoxO1を介してα細胞の分化・増殖・新生とプログルカゴン遺伝子の転写を調節する」という仮説を検証し、糖尿病発症に伴うグルカゴン分泌異常の機序の解明を目指した。 膵α細胞特異的Sirt1欠損マウスではα細胞量の有意な増加を認めるが、空腹時、自由摂食時の血糖値および血中グルカゴン濃度は正常であった。糖負荷試験の結果もコントロールマウスと差が認められなかった。しかしながらインスリン負荷試験の結果、低血糖からの回復が遅延し、血中グルカゴン濃度はむしろ有意に減少し、α細胞量の増加と矛盾した結果を示した。そこでグルコースクランプ法を用いて低血糖を長期持続させたところ、低血糖誘導早期においてはSirt1欠損マウスで血中グルカゴン濃度が低下し内因性糖産生の抑制が見られ、後期においては血中グルカゴン濃度が上昇し内因性糖産生の促進が見られるという、早期と後期での逆転が見られた。 一方Sirt1過剰発現マウスではα細胞量の減少が見られ、Sirt1欠損マウスの結果と合致していた。またα細胞培養株へのSirt1阻害薬の添加実験では、グルカゴン分泌の低下とUCP2発現の増加が見られた。 以上のことから、Sirt1はα細胞において細胞の分化・増殖を抑制する一方、UCP2の発現抑制を介してグルカゴン分泌を促進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウスの解析の結果、当初仮説と合致した結果が得られた。また培養細胞の実験からもそれを示唆する結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
α細胞の分化増殖を制御するSirt1の下流の基質の探索を予定している。 単離ラ氏島を用いた解析はすでに進行中であるが、本研究で作製した遺伝子改変マウスはα細胞とβ細胞の比がコントロールと異なり、正確な解析結果は望めない。 そこでセルソーターを用いて、遺伝子改変マウスからα細胞のみを回収しFoxA2やFoxO1などのSirt1の基質のアセチル化や発現量の解析を行う。
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